アフリカ系米国人(黒人)は白人に比べ、糖尿病患者、非糖尿病者ともHbA1c値が高いことが知られているが、その原因はヘモグロビンの性質差や検査方法の違いによるものではなく、非空腹時血糖値の人種差に由来する可能性が示された。このため、HbA1cの人種別カットオフポイントを設定する必要は認められないという。ジョンズ・ホプキンス大学のElizabeth Selvin氏らが、6月25日から29日まで米オーランドで開催中の第70回米国糖尿病学会学術集会(ADA 2010)で発表した。

 Selvin氏らは、動脈硬化リスクについての地域コホート研究「ARIC」(Atherosclerosis Risk in Communities)のサブ研究で、2004年から2005年にかけて、頸動脈のコントラスト強調画像による検討を行ったARIC Carotid MRI研究(ARIC CARMRI)の参加者を母集団とした断面研究を実施した。対象は、ARIC CARMRI研究に参加した2066人(63-83歳)のうち、8時間以上の絶食試験を実施し、データが得られた1663人とした。

 対象者の平均年齢は71歳、女性が52%、白人が75%、黒人が25%、糖尿病患者は20%だった。

 血糖マーカーとしては、空腹時血糖、HbA1c、糖化アルブミン、フルクトサミン、1.5アンヒドログルシトール(1.5AG)を用いた。各マーカーについて全対象者の平均値と標準偏差(SD)を求め、人種別平均値と全平均値の差をSDで正規化した。値は年齢、性、降圧薬の服用、BMI、教育水準、喫煙など、生活習慣や社会的背景などで調整した。

 調整後に有意差が得られたのは、糖化アルブミン、フルクトサミン、HbA1cの3マーカーだった。糖尿病群、非糖尿病群とも、黒人が白人に対し、0.4-0.6SD前後とほぼ同程度に高値だった。

 Selvin氏は、「これらの結果は、HbA1cの人種による違いが非空腹時血糖値の人種差に由来することを示唆しており、黒人の方がHbA1c値が高いのは、ヘモグロビンの特性のみによるとする説を支持するものではなかった」とみる。さらに、「本研究の結果は、黒人の方が非空腹時血糖値が高く、したがって、黒人が白人より高い高血糖リスクを有していることを示唆する。そのため、現在の情報からは、人種ごとに異なるカットオフポイントを設定する必要性が見い出せない」などと考察した。

(日経メディカル別冊編集)