オーストラリア・メルボルン大学内分泌センターのElif Ekinci氏

 多量の食塩摂取は高血圧のリスクを高めるが、死亡率を高めるかどうかは明らかではない。2型糖尿病患者を約10年間追跡し、ベースライン時の食塩摂取量死亡率との関連をみた研究で、驚くべきことに、食塩摂取量が少ないほど総死亡率、心血管死亡率とも有意に高いことが示された。約10年間の前向き観察研究の結果で、オーストラリア・メルボルン大学内分泌センターのElif Ekinci氏(写真)らが、6月25日から29日まで米オーランドで開催されている第70回米国糖尿病学会学術集会(ADA 2010)で発表した。

 Ekinci氏らは、2000年から2001年にかけて医療機関(1施設)を受診した2型糖尿病患者のうち、9.9年間(中央値)追跡し得た638人を対象とした。食塩摂取量は24時間尿中ナトリウム排出量で測定、対象者の平均24時間ナトリウム排出量は184mmol(食塩摂取量換算で約10.8g)だった。

 9.9年(中央値)、5475人・年の追跡期間中、175人(28%)が死亡した。このうち75人(43%)が心血管死だった。

 24時間尿中ナトリウム排出量の5、25、75、95パーセンタイルで対象者を4群に分け、期間中の全死亡を累積ハザード法で比較したところ、最もナトリウム排出が少なかった5パーセンタイル群が最も死亡率が高く、尿中ナトリウム排出量が多いほど、死亡率は低かった。

 多変量解析により、総死亡の独立な説明因子を求めたところ、24時間尿中ナトリウム排出量の100mmoL/日(食塩摂取量換算で約5.9g/日)の増加は、総死亡の有意かつ独立な説明因子であり、総死亡率を28%有意に減少させていた(ハザード比 0.72、95%信頼区間;0.55-0.94)。また、心血管死亡の累積死亡率に対しても、24時間尿中ナトリウム排出量の100mmoL/日増加が、35%有意に減少させていた(ハザード比 0.65、95%信頼区間;0.44-0.95)。

 Ekinci氏らは、これらの結果から、2型糖尿病患者に関する限り、食塩摂取量は、総死亡および心血管死亡率と負の相関関係があったと結論。食塩摂取が糖尿病の病態生理となんらかの関連性を持つためではないかと推察した上で、「この結果は、最近の糖尿病のガイドラインですべての糖尿病患者に対して減塩を促していることに疑問を投げかけるものだ」とし、他のガイドラインも含め、一律な減塩を求める記述は避けるべきかもしれないと考察した。

(日経メディカル別冊編集)