イタリア・ペルージャ大学のFrancesca Porcellati氏

 2型糖尿病患者に対するインスリン導入に際しては、基礎インスリン製剤が推奨されているが、現在用いられている3製剤は異なるPK/PDを有することが、イタリア・ペルージャ大学のFrancesca Porcellati氏らが行った「PK-PD Study」によって明らかになった。同氏によれば、これまでに基礎インスリン3製剤の2型糖尿病患者におけるPK/PDを比較した試験はほとんどなく、なかでもNPHについては、「驚いたことに、これほど長年用いられ、いまだにもっとも広く普及しているにも関わらず、PK/PDが検討されたことはない」という。3製剤のPK/PDをはじめて比較した「PK-PD Study」の成績は、6月25日から29日まで米オーランドにおいて開催されている第70回米国糖尿病学会学術集会(ADA 2010)で発表された。

 Porcellati氏らは、中間型インスリン製剤(NPH)、インスリングラルギン(グラルギン)、インスリンデテミル(デテミル)の3剤について、2型糖尿病患者におけるPK/PDを比較検討した。方法は、各製剤による1週間の治療を行った後と、実地臨床に即した状態(22時に0.4単位/kgを皮下投与)において、目標血糖値100mg/dLを32時間維持する正常血糖クランプ法によった。

 対象は2型糖尿病患者18人(男性12人、女性6人で、平均年齢は60歳、体重79kg、BMI 29.1、罹病期間12.8年、HbA1c値7.5%、空腹時Cペプチド1.54ng/ml)で、全例がインスリンと経口血糖降下薬による治療を受けていた。これらの患者を3群に分け、3剤をA、B、Cとすると、I群ではA→B→C、II群はB→C→A、III群はC→A→Bの順に投与し、各製剤投与後にクランプ試験を行った。またクランプ試験後、次のインスリン投与までに2週間のwash-out期間を設けるものとした。主要評価項目は、0‐32時間におけるグルコース注入率(GIR AUC‐32)とした。

 目標血糖値の達成という点でもっとも優れていたのは、グラルギンで、続いてNPH、デテミルであった。NPHでは血糖値が夜間に上昇し、ピークとなった。主要評価項目としたGIR AUC0-32は、3剤の中でグラルギンでもっとも大きかった。NPHでの血中インスリン値のピークは5時間後で、その後緩やかに低下した。グラルギンも同様の推移を示したが、低下幅はNPHよりも小さかった。デテミルでの血中インスリン値は、6‐10時間後をピークとして急速に低下した。

 今回の試験結果からPorcellati氏は、3製剤のPK/PDの特徴について、(1)NPH、グラルギン、デテミルは、2型糖尿病患者において異なるPK/PDを有する、(2)NPHは長時間作用するが、ピークが夜早い時間帯にあり、これが低血糖のリスクになる。また明け方に作用が減弱するため、空腹時高血糖(暁現象)を増強する可能性がある、(3)デテミルは夜間低血糖からの保護作用はNPHよりも優れているが、グラルギン、NPHと比較して午後における効果が小さい、(4)グラルギンはNPH、デテミルと比較して最も薬剤活性が高く、作用の変動が少ない、(5)グラルギンは、NPH、デテミルと比較して脂肪分解を抑制し、β細胞、α細胞を休息させる効果に優れている――などとまとめた。

(日経メディカル別冊編集)