米エモリー大学のGuillermo E. Umpierrez氏

 糖尿病患者は非糖尿病者に比べて外科手術を行う頻度が高く、手術時には入院期間が長くなり、周術期の合併症や死亡リスクも高い。特に周術期には血糖値の厳格なコントロールが求められるが、最適な管理法を検討したプロスペクティブな試験は実施されていなかった。米エモリー大学のGuillermo E. Umpierrez氏(写真)は、一般外科手術を行う2型糖尿病患者を対象に無作為化多施設試験を行い、Basal-Bolus療法により入院中の良好な血糖管理が得られ、術後合併症も少ないことを、6月25日から29日まで米オーランドにおいて開催されている第70回米国糖尿病学会学術集会(ADA 2010)で発表した。

 試験名は、RABBIT Surgery(RAndomized Study of Basal Bolus Insulin Therapy in the Inpatient Management of Patients with Type 2 Diabetes Undergoing General Surgery)。多施設、プロスペクティブ、無作為化、オープンラベル試験として実施された。患者の登録基準は、年齢18〜80歳、2型糖尿病の罹病期間は3カ月超、血糖値は140〜400mg/dL、入院前のインスリン用量は0.4単位/kg以下で、経口血糖降下薬を併用している患者とした。

 一般外科手術を行う2型糖尿患者211人が、Basal-Bolus療法による管理を行うBasal-Bolus群、あるいはインスリンを血糖値に応じて1日4回投与するSSI(sliding scale regular insulin)療法で管理するSSI群に無作為に割り付けられた。評価項目は入院中の血糖値(1日平均)、入院中の合併症などである。

 全例が入院時に経口血糖降下薬を中止し、Basal-Bolus群ではインスリンの1日総投与量0.5単位/kgとし、そのうち半量を持効型溶解インスリンアナログであるインスリングラルギン(グラルギン)を1日1回投与、残りを超速効型インスリンアナログ製剤であるインスリングルリシン(グルリシン)を食前に3回に分けて投与した。一方、SSI群では血糖値とインスリン抵抗性から投与量を決定し、食事前および就寝前に1日4回投与した。両群の背景因子に有意差はなかった。

 入院期間の血糖値はBasal-Bolus群の方がSSI群に比べて有意に低下し、食事前および就寝前の血糖値もBasal-Bolus群で有意に低かった。また、SSI療法で血糖コントロール不良であった12人はBasal-Bolus療法に切り替えることで、血糖コントロールは有意に改善した。

 術後合併症の発生率は、Basal-Bolus群で有意に低く(9例 対 26例、p=0.003)、特に創傷感染、急性腎不全の発生リスクは低い傾向が認められた。死亡率は両群ともに1%で両群間に有意差は認められなかったが、Basal-Bolus群では外科手術後のICU滞在頻度は低い傾向があり、実際のICU滞在日数は有意に短縮した(p=0.003)。

 低血糖の発現状況については、血糖値が70mg/dL未満に低下するイベントを起こした患者の割合はBasal-Bolus群で23%とSSI群の4.7%に比べて有意に高かった。しかし、血糖値が40mg/dL未満に低下する重篤な低血糖を来した患者は、それぞれ3.8%、0%で、両群間に有意差は認められなかった。

 以上の検討から、演者らは「一般外科手術を受ける2型糖尿病患者では、グラルギンを1日1回投与し、グルリジンを毎食前に投与するBasal-Bolus療法を行うことで、SSI療法に比べて血糖コントロールは良好となり、術後合併症の発症リスクが低下することが明らかとなった」と結論した。Umpierrez氏は、「2型糖尿病患者に一般外科手術を行う際には、SSI療法は行うべきではない」との見解を示して講演を終えた。

(日経メディカル別冊編集)