岐阜大学大学院医学研究科の大庭志野氏

 喫煙糖尿病の発症に深く関与していることが知られているが、新たに、受動喫煙を強いられている女性では耐糖能異常を来たしやすいことが示された。岐阜大学の疫学教室と糖尿病代謝内科の共同研究により明らかになった。ニューオーリンズで開催された第69回米国糖尿病学会ADA2009)のポスターセッションで、岐阜大学大学院医学研究科の大庭志野氏(写真)が発表した。

 岐阜県は糖尿病対策活動が活発で、岐阜大は研究面で主導する立場にある。今回の発表は一連の研究課題の1つで、喫煙と糖尿病、特に環境たばこ煙(ETS;environmental tobacco smoke)にさらされる女性に焦点を当て、糖尿病発症との関係を明らかにすることを目的に行われた。

 演者らは、2005年に岐阜県内の男性452人、女性648人を対象に断面調査を行った。調査では、75g糖負荷試験2時間値や身長、体重、女性自身と配偶者の喫煙の状況、身体状況、飲酒歴、親の糖尿病歴などを把握した。

 まず、非喫煙者の女性で夫が喫煙している場合、家庭内で何日ぐらい環境たばこ煙(ETS)にさらされているのか調べたところ、1週間のうち7日が55%近くで最も多かった(n=138)。一方、非喫煙者の女性で夫が喫煙しない場合は、1週間のうち0日が58%近くで最も多かった(n=358)。

 次に非喫煙者の女性で夫が喫煙している場合で、家庭内でタバコを吸う人を調べたところ、配偶者が68%で最も多く、訪問者が15%、友人らが3%、配偶者以外の家族らが2%などだった。まったく環境たばこ煙にさらされていないのは15%に過ぎなかった。

 糖尿病との関連では、糖尿病になるオッズ比(95%信頼区間)を求めたところ、非喫煙者を1.00とした場合、喫煙経験者が1.05(0.55-2.01)、喫煙者2.62(1.41-4.90)だった。IGTでは、非喫煙者を1.00とした場合、喫煙経験者が0.91(0.61-1.36)、喫煙者1.32(0.83-2.12)だった。

 男性だけで見ると、糖尿病のオッズ比(95%信頼区間)は、非喫煙者を1.00とした場合、喫煙経験者が0.82(0.34-1.95)、喫煙者1.94(0.81-4.69)だった。IGTでは、非喫煙者を1.00とした場合、喫煙経験者が1.11(0.60-2.03)、喫煙者1.20(0.59-2.47)だった。

 女性(584人)では、糖尿病のオッズ比(95%信頼区間)は、自身が非喫煙者で夫が喫煙しない場合(オッズ比1.00)に対し、自身が非喫煙者で夫が喫煙する場合が0.55(0.15-1.98)、自身が喫煙経験者の場合が0.61(0.08-4.79)、自身が喫煙者の場合が2.72(0.71-10.46)だった。

 耐糖能異常(IGT)のオッズ比は、自身が非喫煙者で夫が喫煙しない場合(オッズ比1.00)に対し、自身が非喫煙者で夫が喫煙する場合が1.78(1.06-2.98)、自身が喫煙経験者の場合は0.76(0.29-1.97)、自身が喫煙者2.94(1.28-6.76)だった。

 これらの結果から演者らは、「これまでの論文で示されているように、喫煙は糖尿病の発症に関与していることが確認された」とした上で、「女性喫煙者、あるいは非喫煙者の女性で夫が喫煙者の場合、自身が非喫煙者で夫が喫煙しない場合に対して、IGTになりやすいことが明らかになった。さらに、非喫煙者の女性で夫が喫煙者の場合、自身が非喫煙者で夫が喫煙しない場合に対して、β細胞の機能が低いことも分かった」と結論した。

 その上で大庭氏は、「これからの患者教育においては、自身の禁煙はもちろんだが、配偶者らもが喫煙しないことも、糖尿病リスクを最小限にすることを訴えていかなければならない」などと結んだ。