米アリゾナ州のPhoenix Veterans Affairs Health Care CenterのWilliam Duckworth氏

 2型糖尿病罹病期間が長く、最大用量の糖尿病治療薬を用いても血糖管理不良である患者に対しては、強化療法であっても標準療法であっても心血管リスクへの影響は変わらない――。これは昨年発表されたVADTVeterans Affairs Diabetes Trial)試験の結論だった。ニューオーリンズで開催された第69回米国糖尿病学会ADA2009)最終日の6月9日、米アリゾナ州のPhoenix Veterans Affairs Health Care CenterWilliam Duckworth氏(写真)らは、サブ解析の結果を報告。糖尿病の罹病期間によっては強化療法が有効な場合があることから、罹病期間を重要な判断材料にすべきなどとする新たな知見を報告した。

 VADT試験の主たる目的は、2型糖尿病の罹患期間が長く、管理不良の患者(1791人)を対象に、心血管イベントに対する強化療法と標準療法の影響を比較することだった。昨年発表された結果は、両群間で心血管リスクへの影響は変わらないというものだった。具体的には、心血管イベントを構成するすべての要素で有意差は見られず、全死亡率にも差は認められなかった。

 その際に演者らは「糖尿病発症からより早い時期に、低血糖を回避しながら強化療法を行えば、心血管リスクに好ましい変化が見られる可能性はある」と考察していた。今回の新たな検討では、この罹病期間、さらに低血糖などに着目した解析結果を明らかにした。

 それによると、強化療法群では、糖尿病の罹病期間が長くなるにつれ、心血管イベントのリスク(ハザード比)も高くなることが示された(p<0.0001)。そのうち「診断から最初の15年間は、強化療法によって心血管イベントのリスクを減らせる可能性が示された。しかし、16年から20年に至っては、その効果を見出せなかった」(Duckworth氏)。なお、この罹病期間効果は、患者の年齢に左右されることはなかった。

 VADT試験では、主要評価項目を、割り付け後の初めての主要な心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心血管死亡、うっ血性心不全、血管疾患に対する外科治療、手術不能の冠疾患、虚血性壊疽に対する四肢切断)に設定していた。これらの主要評価項目に及ぼす罹病期間の影響をみたところ、10〜12年、13〜15年のグループでハザード比0.5前後となり、一方、21年超では2.0近くになっていた。つまり、罹病期間が10〜15年であれば強化療法を行った場合に心血管イベントのリスクを40%減らすことができるが、21年超では心血管イベントのリスクが2倍になるという結果だった。

 このほか、重篤な低血糖が死亡率に影響する危険因子であること、さらにHDL値が高くなると心血管イベントならびに死亡率を減らす可能性があることなどが報告された。