インスリングラルギン(以下、グラルギン)は、比較的低血糖を起こしにくいインスリン製剤であるとされるが、その理由については定かではない。米ナッシュビル・Vanderbilt大学のZhihui Wang氏らは、グラルギンの薬物動態学/薬力学的応答について調べるなかで、グラルギンによる糖代謝促進はクリアランスの促進よりも糖新生の抑制による部分が大きいこと、しかもその作用様式は用量が増しても過剰に応答しない「半用量依存性」であることを見出した。6月7日、ニューオーリンズで開催された第69回米国糖尿病学会(ADA2009)のポスターセッションで報告した。

 Wang氏らは、21例の2型糖尿病患者(平均52±10歳、うち男性11例、BMI 36±6kg/m2、HbA1c 8.2±1.8%)から、無作為に12例×5セットの患者を抽出。それぞれの患者グループに対し、独立したセッティングにて、プラセボ、グラルギン0.5u/kg、1.0u/kg、1.5u/kg、2.0u/kgの単回皮下注射を行い、投与24時間後までの糖代謝ステータスをインスリンクランプ法にて調べた。

 その結果、グラルギンは0.5〜2.0u/kgのすべての用量でプラセボ投与時に比して有意に血糖上昇を抑制した(p<0.05)。グラルギン0.5u/kgの投与時の血糖値はベースライン時より若干上昇したが、1.0u/kg以上のグラルギンを投与した場合は、24時間を通して基礎値のままであった。

 また、グルコース注入率(GIR)も、すべての用量のグラルギン投与に伴って上昇した(p<0.05)。特に、1.0u/kg以上のグラルギンを投与した場合は、24時間後にもGIRは亢進した状態にあり、効果が24時間以上にわたって持続していることが示唆された。

 なお、GIRはグラルギンの用量が増すにつれて増加したが、1.0u/kg投与時と2.0u/kg投与時のGIRのAUC(area under curve)の差は有意ではなかった(820±253mg/kg対1358±331mg/kg、有意差なし)。すなわちグラルギンは、高用量投与時にも過度なGIR亢進をもたらさないことが示唆された。

 また、血中からの糖消失率(Rd)は、グラルギン投与によってさほど大きく上昇することはなかったが、内因性の糖新生(EGP)は相対的に大きく抑制されていた(p<0.05)。すなわち、グラルギンによる血糖維持効果は主としてEGPの抑制に基づくものであり、Rdの促進機序の関与は少ないものと考えられた。

 以上より、グラルギンは主としてEGPの抑制に基づく血糖維持作用を有し、その効果は0.5u/kg以上の単回投与で24時間にわたって持続する一方、高用量のグラルギンを投与しても過度なGIR促進をもたらさない「半用量依存性」の作用様式を有することが明らかとなった。

 Wang氏らは、この「半用量依存性」の作用様式と、Rdには大きな影響を及ぼさないというグラルギンの薬物動態学的/薬力学的特性こそが、グラルギン使用者には低血糖の発現頻度が比較的少ないという臨床における現象を説明する鍵の1つなのではないかと推察した。