わが国でも上市が待たれる新たなインスリン分泌促進薬エクセナチド。しかし、一足早く同剤が認可された米国の“real world”での成績をみる限り、有用性はインスリングラルギン(以下、グラルギン)の方が上かもしれないことが示唆された。ニューオーリンズで開催された第69回米国糖尿病学会ADA2009)の6月7日のポスターセッションで、米ダラス・糖尿病内分泌センターのJulio Rosenstock氏らは、こうした解析結果を報告した。

 エクセナチドは、自然に分泌されるインスリン分泌刺激ホルモン(インクレチン)のように、血糖上昇に反応してインスリン分泌を促すことから、インクレチン・ミメティクスと呼ばれる新たなカテゴリーの薬剤である。2型糖尿病患者に対するエクセナチドのadd-on効果を検討した2つの無作為化臨床試験(RCT)では、対照薬とされたグラルギンと同等の有効性が報告されている1,2)

 しかし、RCTは限定された患者コホートで行われた非日常的な比較である上、上記の2試験ではグラルギン群におけるインスリン用量調節の不適切さが指摘されている。そこでRosenstock氏らは、米国の2つの医療保険データベースに記録された“real world”の糖尿病患者における両者の有用性の比較を試みた。

 今回のRosenstock氏らがソースとして用いたIHCISおよびLabRxという2つのデータベースには、47種の医療保険の加入者約650万人の医療記録が蓄積されている。同氏らは、エクセナチドが上市された2005年5月以降2007年9月までの両データベースから、過去にインスリン治療歴がなく、初めてグラルギンまたはエクセナチドを処方された2型糖尿病患者3万7211例(グラルギン群1万5695例、エクセナチド群2万1516例)のデータを抽出した。

 処方開始6カ月前(ベースライン時)の両群の背景因子を比較すると、グラルギン群に比してエクセナチド群では、「女性の比率が高い(グラルギン:43%対エクセナチド:54%)」「HbA1c値が低い(9.5%対7.9%)、低血糖の発現率が低い(4.8%対2.7%)」「内分泌科受診率が高い(16%対31%)」「合併症が少ない(Charlsonスコア0.75対0.34)」「入院(21.5%対5%)や救急外来受診(21.8%対12.1%)が少ない」「医療費が少額(1万849.00米ドル対4万941.10米ドル)である」といった偏りが認められた。

 次に、処方1年後の両群のアウトカムを比較すると、グラルギン群の方がエクセナチド群よりHbA1c低下が大きく(-1.22%対-0.41%)、到達したHbA1c値も低かった(7.2%対7.8%;背景因子補正後)。

 一方、処方後1年間の低血糖発現率は、過去に低血糖の既往のない患者においてはグラルギン群の方が高かった(6%対3%)が、低血糖の既往のある患者においてはエクセナチド群の方が高かった(35%対43%)。

 また、入院率もエクセナチド群の方が高く(15%対23%;登録時の背景因子および処方後の併用薬について補正後)、処方後1年間に要した医療費もエクセナチド群の方が高額であった(2万4852米ドル対2万7212米ドル;ベースライン時の背景因子および処方後の併用薬について補正後)。

 また、1年後までに処方を中止していた患者の割合は、エクセナチド群の方が多かった(37%対50%)。

 以上のように、“real world”ではエクセナチドよりグラルギンの方がHbA1c低下度が大きいこと、エクセナチドを処方されている患者はグラルギンを処方されている患者に比較して状態のよい患者が多いこと、背景因子の違いを補正すると低血糖発現率や入院率はグラルギンの方が低く、医療費も安くすむという状況が明らかとなった。

 ただし、Rosenstock氏らも述べているように、この結果を普遍的な事実へと昇華させるためには、同じ背景因子をもつ集団での比較試験が必要であろう。

■参考文献
1) Heine RJ et al. Ann Intern Med. 2005;143:559-569
2) Barnett AH et al. Clin Ther. 2007;29:2333-2348