米Oregon大学のMatthew C.Riddle氏

 HbA1c目標値を6.0%未満と低く設定することよりも、重篤な低血糖の方が死亡率の増加と関連している可能性が高いことが分かった。心血管系イベントのリスクが高い2型糖尿病患者1万人以上が参加したACCORD試験の追加解析結果で明らかになった。ニューオーリンズで開催されている第69回米国糖尿病学会ADA2009)最終日の6月9日、ACCORD試験の血糖管理グループのメンバーである米Oregon大学Matthew C.Riddle氏(写真)らが発表した。

 昨年の同学会で「心血管疾患の既往があるまたはそのリスクが高い2型糖尿病患者に強化療法を行っても、大血管系イベントリスクは減少しない。かえって死亡率が有意に増加する」と結論づけたACCORD(Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes)試験結果は、大きな注目を集めた。

 ACCORD試験は、心血管系イベントリスクが高い2型糖尿病患者において、現在の推奨レベルよりも低い血糖値を目指すことで、心血管系イベントリスクのさらなる減少が得られるかどうかを検証することが目的だった。米国およびカナダの試験参加者を、HbA1c値6.0%未満を目標とした強化療法群(5128人)、7.0〜7.9%を目標とした標準療法群(5123人)に無作為割付し、それぞれの治療法を比較検討した。

 結果は、全死亡率が、強化療法群1.41%に対し標準療法群1.14%となり、ハザード比1.22(95%信頼区間1.01-1.46、p=0.04)と、強化療法群で有意な増加がみられた。その際、急激なHbA1c値の低下が死亡率の増加に影響しているのではないかと推察されていた。

 だが、患者の平均HbA1c値と死亡との関連を解析したところ、強化療法群ではHbA1c値が6%から1%上昇すると、死亡の相対リスクが有意に上昇した(RR=1.66、95%信頼区間1.46-1.89、p=0.0001)。Riddle氏は「強化療法群では、平均HbA1c値が7%以上および試験開始から1年間でHbA1c値の低下が得られなかった患者で、高い死亡率を示した。HbA1c高値と死亡率には関連があり、やはりHbA1c値は低下させるべきだという結論が得られた」と述べた。

米国立心肺血液研究所Denise Bonds氏

 その後、米国立心肺血液研究所(NHLBI)のACCORD試験担当であるDenise Bonds氏(写真)が低血糖と死亡率との関連について紹介した。

 強化療法群では、重篤な低血糖を経験していない患者の死亡率が年間1.3%に対し、少なくとも1回重篤な低血糖を来した患者の死亡率は年間2.8%と、有意差は得られなかったものの重篤な低血糖を経験した患者で死亡率が高い傾向がみられた(HR=1.28、95%信頼区間0.88-1.85)。一方、標準療法群では、重篤な低血糖を経験していない患者の死亡率が年間1.0%に対し、少なくとも1回重篤な低血糖を来した患者の死亡率は年間4.9%と、有意に死亡率が増加していた(HR=2.87、95%信頼区間1.73-4.76)。

 Bonds氏は「強化療法群、標準療法群ともに、重篤な低血糖が死亡率増加と関係していると思われた。ただし、重篤な低血糖が死をもたらしたと確認できたケースはまだ1人のみで、報告された重篤な低血糖はすべて避けることができなかったものなのか、という点についても不明な点が残る」とし、まだ詳細を解析途中であるとして明言を避けた。

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