米アトランタ・Emory大学のGuillermo Umpierrez氏

 インスリン療法による低血糖の危険因子については、いまだ謎が多い。米アトランタ・Emory大学Guillermo Umpierrez氏(写真)らは、対象や試験デザインが似た2つの無作為化比較試験RCT)における低血糖発現状況を比較することにより、低血糖危険因子を探ろうとした。その結果、高齢や低体重、クレアチニン(Cr)の上昇に加え、インスリン療法の既往が低血糖と関連する可能性を見出したことを6月6日、ニューオーリンズで開催されている第69回米国糖尿病学会ADA2009)のポスターセッションにて報告した。

 基礎インスリンと超速効型インスリンの併用(basal-bolus療法)は、低血糖を起こしにくいレジメンであり、異なったbasal-bolus療法下での低血糖発現状況を比較すれば、低血糖を規定する危険因子の一端を垣間見ることも期待できる。しかし、これまでのところ、basal-bolus療法同士を直接比較したRCTはない。

 そこでUmpierrez氏らが目をつけたのが、RABBIT-2およびDEANという2つのRCTだ。RABBIT-2はインスリングラルギンとインスリングルリジン(本邦本年4月承認)によるbasal-bolus療法(GLA/GLU群)とスライディングスケールを使ったレギュラーインスリン(SSRI群)との比較、DEANはインスリンデテミルとインスリンアスパルトによるbasal-bolus療法(DET/ASP群)と混合型+レギュラーインスリン併用(NPH/regular群)との比較であるが、対象や試験デザインは非常によく似ている。

 対象は、どちらも罹病歴3カ月以上の2型糖尿病患者であり、患者数はRABBIT-2のGLA/GLU群が65例、SSRI群が65例、DEAN試験のNPH/regular群が63例、DET/ASP群が67例の計260例と、各群ほぼ同数であった。また、年齢や男女比、人種構成、BMI、登録時のHbA1c値もほぼ同等であった。

 また、両試験とも経口血糖降下薬を中止の上でインスリンを投与しており、血糖値(BG)140〜200mg/dLの場合は0.4U/kg/日、201〜400mg/dLの場合は0.5U/kg/日を初期投与量としている点も同じだった。ただし、RABBIT-2では全例がインスリン未導入の患者であったのに対し、DEANにはすでにインスリンを使用している患者も含まれていた。その場合、上記の初期インスリン投与量ではなく、前治療の投与量が踏襲されていた。

 両試験のデータを合わせて解析した結果、GLA/GLU群とDET/ASP群における血糖改善効果は、どちらもNPH/regular群と同等かつSSRI群より有意に優れていた(p<0.01)。一方、BG<60mg/dLまたは<40mg/dLの低血糖の発現率は、GLA/GLU群(7.7%、0%)とSSRI群(3%、0%)が低く、DET/ASP群(28.4%、4.5%)とNPH/regular群(22.2%、3.2%)で高かった(いずれもp<0.001)。

 低血糖(<60mg/dL)が認められた患者(41人)とそれ以外の患者(219人)の背景因子を比較すると、年齢(59.6±11歳対56.5±11歳、p=0.046)、体重(86.0±23kg対96.7±28、p=0.027)、Cr値(1.24±0.4mg/dL 対 1.07±0.4mg/dL、p=0.009)、それまでの治療内容(p=0.003)、今回の治療内容(p<0.001)、そしてインスリン療法の既往(p<0.001)に有意な差が認められた。

 DEAN試験の全コホートにおけるインスリン療法既往者と未導入者を比較した場合、両者の低血糖発現率に有意な差は認められなかった(28.6%対20.3%、p=0.281)。しかし、DET/ASP群のインスリン療法既往者における低血糖発現率は、同群における未導入者に比して有意に高かった(p=0.042)。

 一方、インスリン未導入者のコホートでの比較では、NPH/regular群における低血糖発現率は、SSRI群やGLA/GLU群より有意に高かった(それぞれp=0.031、p=0.026)。

 以上より、低血糖の発現パターンはレジメンの違いと過去のインスリン治療歴によって異なり、少なくともDET/ASPに対する低血糖応答は、インスリン療法の既往の有無により左右されることが示唆された。