1型糖尿病の子どもにとって親の役割は大きい。主として世話に当たっている母親の支えが重要であることはもちろんだが、母親の影に隠れがちな父親の力も見逃せないことが報告された。父親の視点は治療中の子どもの感情面に注がれることが多く、それが子どもの生活の質に良い影響を与えうることが示された。米Loyola University Chicago子ども記念病院のJill Weissberg-Benchell氏らが6月8日、ニューオーリンズで開催されている第69回米国糖尿病学会ADA2009)の一般口演で発表した。

 演者らは、特に父親は、1型糖尿病の子どもの世話をする際に、主として世話に当たる母親とは異なる経験をしていることに着目。今回の発表では、第1次介護者あるいは第2次介護者が着目する点が、子どもの治療や生活の質(QOL)にどのような影響を与えるのかを調べるために、それぞれの介護者別に検証した。

 対象は4施設の186家族。介護者は2人で、主として世話に当たっている第1次介護者が母親の場合は87%、主たる世話人ではない第2次介護者が父親の場合は83%だった。治療中の子どもは、平均年齢11.7±1.8歳、HbA1c8.2±1.4%だった。25%がマイノリティで、平均治療期間は4.9±3.3年だった。

 調査では、子ども、第1次介護者、第2介護者の3者から、子どもの治療成績および糖尿病に特有な家族の挙動(態度)について報告を求める形で行われた。

 子どもの治療成績は、生活の質(QOL)、HbA1c、およびうつ症状などの項目を設定した。糖尿病に特有な家族の挙動(態度)は、糖尿病特有の葛藤、糖尿病の負担の共有、血糖値のモニタリングに対する心情と信念、および低血糖症への恐れなどの各項目とした。

 その結果、主として母親である第1次介護者の報告内容は、子どもの治療成績に関するものが大半だった。特に、生活の質(QOL)と子どもが報告したうつ症状との関連が認められた。

 重要なことは、第2次介護者からの報告の中身が第1次介護者とは異なっていた点だ。第2次介護者からの報告には、糖尿病に特有な家族の挙動(態度)について、つまり糖尿病特有の葛藤、血糖値のモニタリングに対する心情と信念、低血糖症への恐れの3項目に関する内容が多く、これらの点で、第1次介護者以上に子どもの生活の質に影響を与えていることが分かった。

 QOLの予測因子について各報告者別にP値をみたところ、たとえば「糖尿病特有の葛藤」は子どもでp<0.01、第1次介護者でp<0.05、第2次介護者ではp<0.0001となった。「心情と信念」は、子どもp<0.05、第2次介護者p<0.0001、「低血糖症への恐れ」は子どもp<0.05、第2次介護者p<0.0001だった。いずれも、第2次介護者で強いQOLの予測因子といえた。つまり、第2次介護者が報告する内容は、子どものQOLに大きく影響するものであることが示唆された。

 なお、第2次介護者の報告は、第1次介護者の報告以上にHbA1cと子どものうつ症状の報告とは関連がなかった。

 これらの結果から演者らは、「第2次介護者(主として父親)は家族の機能に関して独自の重要な視点を持っており、それは子どもの血糖管理の成績よりも感情面の支援に注がれていることを示唆した」と結んだ。

 その上で、(1)子どもの診療において、1人の親だけを相手にした場合は、もう1人の親の重要な視点を逃すことになる、(2)子どもだけでなく、その家族とともに治療に取り組むことが、糖尿病管理の成功の秘訣である、(3)特に父親の視点は、母親の視点とともに、子どもの理解のために重要視すべきである――などと考察した。