米Pittsburgh大のTrevor Orchard氏

 冠動脈疾患を有する糖尿病患者に対する薬物療法とバルーンまたはステントを用いた経皮的冠動脈形成術PCI)および冠動脈バイパス術CABG)において、患者の死亡率にもたらす影響を比較したところ、いずれも明らかな差はないことが示された。2008年11月に追跡期間が終了したBARI 2D試験の結果で、米ニューオーリンズで開催されている第69回米国糖尿病学会ADA2009)のシンポジウムで6月7日、同試験のディレクターである米Pittsburgh大のTrevor Orchard氏(写真)が発表した。

 BARI 2D(Bypass Angioplasty Revascularization Investigation in Type 2 Diabetes)試験の登録患者は、待機的な血行再建術または内科的治療が必要な冠動脈疾患を有する2型糖尿病患者2368人(平均年齢62.4歳)。

 まず、PCIを行うべきかCABGを行うべきかを、患者背景を考慮しながら循環器専門医が選択。その結果、1605人がPCI、763人がCABGの選択となった。

 その上で、それぞれ速やかなPCIまたはCABGを行う群もしくは薬物療法群に無作為割付した。さらにその後、インスリン製剤を含む治療を積極的に行うか、体内のインスリン抵抗性を改善する治療を行うかによって2群に分け、影響を比較した(インスリンなし群でも必要に応じてインスリン導入を行った)。平均5.3年、追跡を行った。なお、血圧および脂質に関しては別途、十分な治療を実施した。

 最終的には、「血行再建術ありインスリンあり」群が592人、「血行再建術ありインスリンなし」群が584人、「血行再建術なしインスリンあり」群が593人、「血行再建術なしインスリンなし」群が599人となった。主要評価項目は全死亡率、心筋梗塞や脳卒中などの大血管系イベントとした。

 全死亡率に関しては、5年生存率が血行再建術群で88.3%、薬物療法群で87.8%となり、有意差は得られなかった(p=0.97)。インスリンなし群では89.9%、インスリンあり群では89.2%で、こちらも有意差はなかった(p=0.79)。

 大血管系イベントを免れたのは、血行再建術群で77.2%、薬物療法群で75.9%で、両群で有意差は得られなかった(p=0.70)。インスリンなし群では77.7%、インスリンあり群では75.4%で、こちらについても有意差はなかった(p=0.13)。

 Orchard氏は「迅速な血行再建術を行っても、薬物療法のみの患者群と比べて死亡率が減少しないことが示された」とした上で、危険性の高い患者に行うことの多いCABGと危険性の低い患者に行うことの多いPCIを、それぞれ薬物療法群と比較した結果を紹介。それによれば、5年生存率はCABG群86.4%、薬物療法群83.6%と有意差はなかったものの(p=0.33)、大血管系イベントを免れたのはCABG群77.6%、薬物療法群69.5%となり、CABG群で優れた大血管系イベントの抑制効果が示された(p=0.01)。

 一方、PCIについては、5年生存率がPCI群89.2%、薬物療法群89.8%(p=0.48)。大血管系イベントを免れたのは、PCI群77.0%、薬物療法群78.9%となり、有意差は得られなかった(p=0.16)。

 Orchard氏は「今後、様々なサブグループの解析を予定している。治療効果に関しても、血糖コントロール、低血糖の頻度、体重変化など多様な側面から検討を加えたい。今回発表した結果からは、冠動脈疾患を有する糖尿病患者の治療において、循環器専門医と糖尿病専門医が協力して治療に当たるべきだと言える」と総括した。