米バージニア大学のAnne M. Wolf氏

 生活様式介入の費用の見返りは、果たしてどれほどあるのだろうか――。この疑問に対する1つの回答が報告された。米バージニア大学Anne M. Wolf氏(写真)らが取り組んでいる「ICAN Program」の解析の結果、生活様式ケアを提供するのに投入した費用は、最大で1ドル当たり29.84米ドルの回収ができることが示された。6月7日、ニューオーリンズで開催中の第69回米国糖尿病学会ADA2009)の一般口演で発表した。

 生活様式の指導が2型糖尿病治療の要にも関わらず、費用対効果が明確でない面もあって、臨床診療に充分に組み入れられているとはいえないのが現状である。演者らはこの問題認識のもと、あるプログラムの財政的な影響を評価するのに有用な指標とされる投資の見返り(ROI)に着目。2型糖尿病患者への生活様式介入の効果を、ROIによって評価した。
 
 演者らはこれまでに、生活様式介入群と通常の治療群を比較し、その成果を報告していた。

 比較試験は、2型糖尿病と肥満を持つ健康保険加入者147人を、無作為に1年間の生活様式介入群(LI群)と通常の治療群(UC群)とに分けた。LI群に対しては、登録栄養士による毎月の個人およびグループカウンセリングが行われた。UC群には、教育用のパンフレットが配られたのみ。両グループは、通常の医療を受けた。

 その結果、LI群はUC群に比べて、より大きな減量効果 (p<0.001)、HbA1cの軽減(p=0.02)、生活の質の改善(p<0.001)、医療費の削減(p<0.05)、生産性の向上(p≦0.001)などが認めれた。

 今回は、生活様式介入のために投入した資金とその効果を、ROIという指標で評価することだった。

 ROIは、1年間の結果を基礎とし、プログラムにかかった費用のデータ、健康保険請求データから集めた総医療費、自己申告による労働日数と障害日数(糖尿病や肥満が原因で取ったもの)などを使い計算した。

 年間の労働損失と障害日数は、米国の年齢別と性別の平均賃金を用いて賃金に換算した。感度解析を、医療費と損失賃金の95%信頼区間をもとに様々な見返り額について行った。

 試験開始時、両群の背景は、すべての人口統計学的変数が同等であった。1年後、生活様式介入にかかった直接費用は、1人当たり328米ドルだった。平均年間医療費は、UC群で1万1406米ドル、LI群で7495米ドルだった。労働損失日数と障害日数相当の年間賃金は、UC群で1125.80米ドル、LI群で248.50米ドルだった。

 これらのデータから生活様式プログラムに投入された費用の1ドル当たりの見返り(ROI)は、14.58米ドルと計算された。95%信頼区間でみると、ROIは2.08-29.84米ドルとなった。つまり、生活様式ケアを提供するのに投入した費用は最大で、1ドル当たり29.84米ドルの回収ができることが示された。

 演者らは、ICAN Programを通じて「2型糖尿患者に対する生活様式の介入を実施すると糖尿病と体重の管理を改善するばかりでなく、生活様式ケアを通常の医療に組み入れることの重要性を支持するに十分な見返り(ROI)も明らかになった」とまとめた。