ドイツ・Mainz大学のCloth Hohberg氏

 毎日の食事の後は、2型糖尿病患者の疲弊した膵β細胞にとって最も負担の大きい時間帯だ。一方、早期からのインスリン導入は、低用量でもβ細胞ストレスを改善する可能性が近年報告されている1,2)。ドイツ・Mainz大学Cloth Hohberg氏(写真)らは、ビグアナイドBG)薬に加えて中間型インスリンまたはインスリングラルギンを投与した場合のβ細胞ストレスへの影響を検討。その結果、インスリングラルギンの方が食後、特に夕食後のβ細胞ストレス改善効果が高いことを確認した。6月6日、ニューオーリンズで開催されている第69回米国糖尿病学会ADA2009)のポスターセッションで報告した。

 本検討の対象は、BG薬とスルフォニア尿素(SU)薬にてコントロール不良な2型糖尿病患者28人。患者の平均年齢は61.5±6.7歳、罹病期間は9.8±6.5年、HbA1c値は7.1±0.5%、BMIは30.7±4.3kg/m2だった。

 Hohberg氏らは、これらの患者を中間型インスリン群(NPH群、14人)とインスリングラルギン群(GLA群、14人)に無作為に割付し、それぞれのインスリン製剤の就寝前投与とBG薬(1000mg)の1日2回投与にて、空腹時血糖(FPG)<100mg/dLをメルクマールとした治療を3カ月間行い、治療前後のFPGおよび膵β細胞ストレス変化を比較した。

 なお、膵β細胞ストレスの指標には、食後にβ細胞から分泌されるプロインスリン量を用いた。プロインスリン分泌量は、朝・昼・夕の各食前および食後60分、120分の血中プロインスリン濃度を測定し、その経時変化のグラフが作る曲線下面積(AUC)によって求めた。

 その結果、治療3カ月後のFPGは、NPH群・GLA群とも有意に低下した(NPH群:156±34mg/dLが119±29mg/dLへ、GLA群:158±19mg/dLが121±23mg/dLへ、ともに登録時に対してp<0.01)。ただし、両群のFPG低下度には有意な差は認められなかった。

 また、朝食後のプロインスリン分泌量も、両群ともに有意に低下(NPH群:4,080±2310pmol・分/Lが1,715±1129pmol・分/Lへ、GLA群:3469±993pmol・分/Lが1630±695pmol・分/Lへ、ともに登録時に対してp<0.05)し、両群の低下度は同等であった。

 しかし、昼食後のプロインスリン分泌量は、やはり両群とも有意な低下(NPH群:6358±3544pmol・分/Lが2933±1,703pmol・分/Lへ、GLA群:5813±1702pmol・分/Lが2356±943pmol・分/Lへ、ともに登録時に対してp<0.05)を示したが、低下度はGLA群の方が若干大きい傾向がみられた(p=0.08)。

 さらに、夕食後のプロインスリン分泌量については、やはり両群とも有意な低下(NPH群:4960±2789pmol・分/Lが2123±1426pmol・分/Lへ、GLA群:3865±1295pmol・分/Lが1503±665pmol・分/Lへ、ともに登録時に対してp<0.05)を認めたものの、低下度はGLA群の方が有意に大きかった(p<0.05)。

 以上のように、BG薬に追加しての基礎インスリン療法は、中間型インスリンあるいはインスリングラルギンのいずれの製剤を用いた場合でも、食後の膵β細胞ストレスの改善に働くが、昼食後の効果はインスリングラルギンの方が良好な傾向がみられ、夕食後にはさらにその違いが著明かつ有意となった。すなわち、就寝前に投与した中間型インスリンの効果は、翌日の夕食時までに減弱するのに対し、インスリングラルギンの効果は24時間にわたって持続するものと考えられた。

■参考文献
1) Pfützner A et al. Diabetes Technol Ther 2006;8:375-384
2) Hohberg C et al. Diabetes Care 2008;31:1021-1025