英国・Newcastle大学のPhilip D.Home氏

 チアゾリジン薬の1つであるロシグリタゾンは、長期観察では心血管リスクを上昇させないことが示された。4000人以上の糖尿病患者を対象に行われたRECORD試験の成果で、平均5.5年間の長期にわたりロシグリタゾンおよびビグアナイド薬のメトホルミンスルホニル尿素剤SU剤)の併用と、メトホルミンとSU剤の併用とを比較した結果、心血管疾患による入院や心血管死をもたらすリスクは同等であることが分かった。主任研究者である英国・Newcastle大学のPhilip D.Home氏(写真)が6月5日、米ニューオーリンズで開催されている第69回米国糖尿病学会ADA2009)のシンポジウムで発表した。

 RECORD(Rosiglitazone Evaluated for Cardiovascular Outcome and Regulation of Glycaemia in Diabetes)試験の参加国は、欧州を中心に25カ国364施設に上る。試験デザインは、メトホルミンまたはSU剤単独治療を行っている患者4458人に対し、それぞれロシグリタゾンまたは使用していないもう一方の薬の併用をオープンラベルで割り付けする方法で行われた。主要評価項目は、心血管疾患による入院または心血管死の頻度とした。

 ロシグリタゾン群2220人、メトホルミンとSU剤の併用群2227人を平均5.5年追跡した。各群の患者背景に違いはなかった。

 その結果、ロシグリタゾン群の心血管疾患による入院または心血管死は321件で、メトホルミンとSU剤の併用群の323件と有意差は得られなかった(ハザード比0.99、95%信頼区間0.85-1.16、p=0.93)。心血管死のみでみても、ロシグリタゾン群60件に対してメトホルミンとSU剤の併用群71件と、有意差はなかった(ハザード比0.84、95%CI0.59-1.18、p=0.32)。

 心血管疾患に関しては、心臓発作はロシグリタゾン群64件、メトホルミンとSU剤の併用群56件で、ややロシグリタゾン群で高い傾向はみられたものの、有意差はなかった(ハザード比1.14、95%CI0.80-1.63、p=0.47)。一方、脳卒中はロシグリタゾン群46件に対し、メトホルミンとSU剤の併用群63件と、ロシグリタゾン群でやや少ない傾向はあったものの、こちらも有意差には至らなかった(ハザード比0.72、95%CI0.49-1.06、p=0.10)。ただし、心不全はロシグリタゾン群が61件、メトホルミンとSU剤の併用群が29件で、有意にロシグリタゾン群で多かった(ハザード比2.10、95%CI1.35-3.27、p=0.001)。

 血糖コントロールに関しては、HbA1c値はロシグリタゾン群でメトホルミンとSU剤の併用群に比べ、有意に改善した(p<0.0001)。また、LDLコレステロール値の悪化およびHDLコレステロール値の改善についても、ロシグリタゾン群はメトホルミンとSU剤の併用群を有意に上回った(p<0.0001)。一方、体重はロシグリタゾン群でメトホルミンとSU剤の併用群に比べ、有意に増加していた(p<0.0001)。

 網膜症や足病変という2つの合併症について、ロシグリタゾン群はメトホルミンとSU剤の併用群に比べ、減少する傾向はあったものの、有意差はなかった(ハザード比0.75、95%CI0.54-1.05)。骨折については、ロシグリタゾン群185件に対し、メトホルミンとSU剤の併用群118件と、ロシグリタゾン群で有意に多かった(ハザード比1.57、95%CI1.26-1.97、p<0.0001)。

 男女別にみると、ロシグリタゾン群は女性124件、男性61件、メトホルミンとSU剤の併用群は女性68件、男性50件だった。ロシグリタゾン群はメトホルミンとSU剤の併用群に比べ、女性は1.82倍、男性は1.23倍、骨折の相対リスクが高かった。

 Home氏はまとめとして、「主要評価項目は満足のいく成績だった。しかしながら、ロシグリタゾンは心不全のリスクを増加させ、特に女性で骨折を増加させるなどの悪影響があった。この点に注意して慎重に用いる必要があるだろう。また、この試験では生じたイベント数が予期していたよりも少なく、心臓発作のリスク等について結論が出たとは言いにくい」と結んだ。