米国University of Alabama at BirminghamのJeffrey R. Curtis氏

 ヤヌスキナーゼ(JAK)を阻害する新規経口薬トファシチニブは、米国に続き、日本でも関節リウマチ(RA)を適応症として承認されているが、これまでの動物実験や臨床試験の結果から、悪性腫瘍の発生リスクが上昇する可能性が指摘されている。米国University of Alabama at BirminghamのJeffrey R. Curtis氏らの研究グループは、10月26日から30日に米国サンディエゴで開催された米国リウマチ学会(ACR2013)において、臨床試験や長期継続投与試験のデータに基づいた研究から、発癌率の増加は認められなかったと報告した。

 研究グループは、2013年4月までに実施された6つの無作為化第2相試験、6つの無作為化第3相試験と、オープンラベルで行われている2つの長期継続投与試験のデータに基づいて発癌性を評価した。試験はいずれも中等度から重度の活動性RAで、非黒色腫皮膚癌を除いて過去に発癌が認められたことのない患者を対象とした。各試験では、トファシチニブの単剤投与または生物学的製剤を除いたDMARDsとの併用投与が行われた。

 投与期間は第2相試験で6週?6カ月、第3相試験では6カ月以上。投与量は5mg 1日2回、または10mg 1日2回投与(日本および米国で承認された投与量はいずれも5mg 1日2回投与)だった。また、今回の研究に組み入れた長期継続投与試験は、第2相または第3相試験に参加した患者を対象としており、試験後も継続してトファシチニブの服用を行っている。

 発癌性は、治験実施施設の治験責任医師から報告のあった副作用、重篤な副作用、臨床検査値の履歴から特定した。生検例の病理診断は、治験実施施設の病理医が判定後、別の病理医が盲検で評価した。評価結果が分かれた場合は、より保守的な評価を採用した。生検していない例は、治験責任医師の報告に基づいて癌腫を分類した。標準化罹患比の検討に際しては、Surveillance Epidemiology and End Results (SEER) の発癌率を用いた。

 評価対象は5671例で、トファシチニブ投与の継続期間は、6カ月以上が4748例、1年以上が3873例、2年以上が3080例、3年以上が1910例、4年以上が556例だった(全投与量、重複あり)。

 調査の結果、非黒色腫皮膚癌の66例を除き、107例に発癌を認めた。癌腫は肺癌が24例と最も多く、次いで乳癌が19例、リンパ腫が10例だった。トファシチニブの投与期間と発癌率との相関は認められなかった。肺癌、乳癌、リンパ腫について、臨床試験期間中の投与量別に発癌率を比べたところ、投与量との相関も見られなかった。

 解析の結果、トファシチニブ投与患者の1年当たりの発癌率は0.85%。米国の大規模癌登録システムであるSEERのデータに基づいた発癌率と比較した標準化罹患比は1.08(95%信頼区間:0.70-1.02)となり、有意な増加は認められなかった。中等度から重度のRA患者を対象とした複数の観察研究から示されたTNF阻害薬やDMARDsと比較しても、標準化罹患比の比率が0.9-1.1となり、大きな増加は認めなかった。肺癌、乳癌、リンパ腫の個別の発癌率についても、同様だった。Curtis氏は、「ただし、発癌率を評価するため、今後も追跡を継続することが必要だ」と話していた。