岐阜大学脊椎骨関節再建外科学の佐藤正夫氏

 リウマトイド因子(RF)および抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)の陽性所見は、関節リウマチ(RA)の治療への反応性と関連するとされる。岐阜大学脊椎骨関節再建外科学の佐藤正夫氏らによる多数例の検討から、インフリキシマブ(IFX)による治療の場合はRFないしACPAの陽性所見が治療抵抗性を示す因子となるが、トシリズマブ(TCZ)ではそのような関連は見られないことが明らかになった。10月30日まで米国サンディエゴで開催されていた米国リウマチ学会(ACR2013)で報告された。

 本検討はIFXまたはTCZが投与されたRA患者を対象にした後向き研究で、52週の治療効果をDAS28-ESR寛解とBoolean寛解で評価し、加えて有効性に影響を及ぼす患者背景因子について、多変量ロジスティック回帰分析を用いて分析した。

 IFX群(142例)、TCZ群(93例)の年齢(IFX群58.1歳、TCZ群55.0歳、以下同様)、女性比率(79%、82%)、RA罹病期間(8.2年、8.6年)に差はなかった。IFX群では全ての患者が生物学的製剤の初回投与例で、かつ全例にMTXが併用投与されていた。一方、TCZ群では56%の患者に生物学的製剤の投与歴があり、MTXの併用率は55%だった。RF陽性率は両群ともに80%、ACPA陽性率はIFX群82%、TCZ群87%だった。

 RF陽性所見の有無別に52週後のDAS28-ESR寛解率を比較したところ、IFX群ではRF陰性例で58.6%、陽性例では36.3%と、両群間に有意差が見られた(P=0.02)。同様にACPAについても、陰性例の61.5%に対して陽性例では36.2%と、陽性例では有意に低値だった(P=0.01)。

 一方、TCZ群の52週後のDAS28-ESR寛解率は、RF陰性例79.0%、陽性例68.9%、ACPAでも陰性例83.3%、陽性例69.1%と、RFとACPAのどちらも、陽性例における寛解率の有意に低下は認められなかった。

 Boolean寛解達成率については、IFX群、TCZ群ともに、RFやACPA所見の影響を受けていなかった。しかし、Boolean寛解の各指標について見ると、IFX群の「圧痛関節数≦1」達成率は、ACPA陰性例88.5%、陽性例59.5%(P=0.005)、「腫脹関節数≦1」達成率はそれぞれ84.6%、59.5%(P=0.01)と、いずれも陽性例の方が有意に低かった。TCZ群ではこうした差は見られなかった。

 治療前の患者背景と52週後のDAS28-ESR寛解率との関連を検討したところ、IFX群の寛解非達成例では達成例に比べて、CRP値、疾患活動性、RF陽性率、ACPA陽性率がそれぞれ高かった。一方TCZ群では、寛解非達成例と達成例の背景に違いは認められなかった。

 多変量ロジスティック回帰分析では、52週後の寛解非達成と関連する因子として、IFX群ではDAS28-ESR(オッズ比 2.24、95%信頼区間 1.52-3.47、P=0.0001)、ACPA陽性(同2.82、1.19-6.97、P=0.0406)が同定されたが、TCZ群では寛解非達成と有意に関連する因子は同定されなかった。

 以上の検討から佐藤氏は、「RF陽性、ACPA陽性はIFXの治療成績に影響を及ぼすが、TCZの治療成績には影響を及ぼさない」と結論した。