国立病院機構名古屋医療センター整形外科の石川尚人氏

 生物学的製剤を使用している関節リウマチ(RA)患者について、インフルエンザワクチン接種前後の抗体価を検討した研究で、投与中の抗リウマチ薬によって、抗体価の獲得が異なる可能性が示された。10月26日から30日まで米国サンディエゴで開催されている米国リウマチ学会(ACR2013)で、国立病院機構名古屋医療センター整形外科の石川尚人氏らが報告した。

 高齢患者が多く、呼吸器疾患や循環器疾患を合併しやすいRAでは、一般にインフルワクチンの接種が推奨されており、国内では大部分の患者が実際に接種を行っている。なかでも生物学的製剤を使用している患者に対しては、特に積極的に接種が推奨されている。しかし、生物学的製剤はインフルワクチン接種時の免疫応答を抑え、抗体価を上がりにくくする可能性がある。

 そこで石川氏らは、2012年10月から13年1月にかけ、同医療センターでインフルワクチンを接種した182人の成人RA患者を対象に、RA治療とインフルエンザ抗体価の関連について検討した。

 接種したのは国産の2012〜13シーズンの3価不活化ワクチン(A/H1N1、A/H3N2、B型)で、いずれも0.5mLを皮下に1回接種した。生物学的製剤群は134人で内訳は、アバタセプト37人(うち13人がMTX併用)、トシリズマブ80人(22人がMTX併用)、ゴリムマブ17人(13人がMTX併用)で、MTX単剤を投与している48人を対照群とした。

 接種前と接種1カ月後にインフルエンザウイルスに対する抗体価を測定し、生体防御率(感染防御に必要な40倍以上のHI抗体価を獲得した人の割合)と抗体陽転率(HI抗体価が接種前に10倍未満で接種後に40倍以上となった人の割合)を調べた。抗体価の測定には赤血球凝集抑制試験(hemagglutination inhibition test:HI法)を用いた。

 まず、生物学的製剤群と対照群について、接種前後の抗体価を比較した。その結果、3つの亜型対する接種後の生体防御率は、生物学的製剤群(MTX併用含む)、対照群とも、接種前と比較して有意に高まった(P<0.05)。ただし、生物学的製剤とMTXを併用している患者だけを抜き出したところ、接種後に生体防御率が有意に高まったのはH1N1(P<0.05)に対してだけだった。

 抗体陽転率については、生物学的製剤群(MTX併用含む)と対照群、生物学的製剤のうちMTX併用群のみと対照群の各群間で差はなかった。

 次に、薬剤別に接種前後の抗体価を対照群と比較した。その結果、トシリズマブ投与中の患者では、A/H1N1とA/H3N2については対照群と有意差はなかったが、B型に対する生体防御率は対照群よりも有意に高かった(P<0.05)。

 一方、アバタセプトとゴリムマブ投与中の患者では、A/H1N1とB型では対照群との有意差は認められなかったが、A/H3N2に対する生体防御率は、いずれも対照群より有意に低かった(ともにP<0.05)。

 生物学的製剤とMTXを併用している患者だけを抜き出したところ、トシリズマブとゴリムマブ投与中の患者の接種後の生体防御率はどの亜型に対しても対照群と変わらなかったが、アバタセプト投与中の患者のA/H3N2に対する生体防御率は対照群よりも有意に低かった(P=0.04)。

 アバタセプト投与中の患者のA/H3N2に対する抗体陽転率は、対照群よりも有意に低かった(P<0.05)。生物学的製剤とMTXを併用している患者だけを抜き出したところ、トシリズマブとゴリムマブ投与中の患者の接種後の抗体陽転率は対照群と変わらなかったが、アバタセプト投与中の患者のA/H1N1に対する抗体陽転率は、対照群よりも有意に低かった(P=0.03)。

 全体を通じて、生物学的製剤群と対照群の接種後の抗体価の推移に違いはなかったが、生物学的製剤とMTXを併用した場合は、抗体価が上がりにくくなる傾向が見られた。また、生物学的製剤の種類と亜型の組み合わせによって、生体防御率や抗体陽転率に差異が認められた。石川氏は「今後は、MTXの投与量やステロイド併用の有無の影響も考慮して、ワクチン接種後の抗体価の推移について検討していきたい」と話している。