アイルランドSt. Vincent's University HospitalのLeonard C. Harty氏

 生物学的製剤の登場により、関節リウマチ(RA)患者の整形外科手術は大きく減少した。これに伴う入院日数の減少によって、アイルランドにおける医療費は年間1600万ユーロも削減されたとの推算結果が示された。同国St. Vincent's University HospitalのLeonard C. Harty氏らが、11月10日から14日まで米国ワシントンDCで開催された第70回米国リウマチ学会(ACR2012)で発表した。

 今回の推計値は、アイルランドにある57の医療機関における生物学的製剤登場前後のRA患者の入院日数および関節手術施行件数、抗TNF薬の処方件数の推移などを基に算出したもの。検討に際して、同国における病床の利用状況を記録しているHospital InPatient Enquiry(HIPE)システムから1995年から2010年までのデータを入手した。

 抽出されたRA患者は5万7774例で、男女比は1対2、平均年齢は66歳だった。RA患者の年間の延べ入院日数については、2002年までは5万人・日前後で増減していたが、2002年以降は減少傾向にあり、2010年は3万1000人・日程度まで少なくなった。

 また、抗TNF薬の処方件数に関しては、2000年には2389件にすぎなかったが、年々直線的に増加し、2010年には11万6747件と達した。抗TNF薬処方件数と延べ入院日数の間には、強い負の相関が認められた(r=−0.8、P=0.006)。したがって、TNF薬の普及によると思われる入院の減少によって、1年間で約1600万ユーロの医療費の節減がもたらされたと推計された。

 関節手術の件数を見ると、2002年以前の550件/年から減り続け、2010年には291件/年とほぼ半減した。関節手術件数と抗TNF薬処方件数との間には、同様に強い負の相関が認められた(r=−0.9636、P<0.0001)。

 この傾向は、関節手術の種類別に分けてみても変化はなかった。例えば、股関節全置換術(THR)は2002年以前に比べて44%減少しており(71件/年→40件/年)、抗TNF薬処方件数との相関係数rは−0.9(P=0.0007)。膝関節全置換術(TKR)は同じく53%減少し(79件/年→37件/年)、抗TNF薬処方件数との相関係数rは−0.96だった(P=0.03)。

 以上から、アイルランドにおける近年のRA患者の入院日数の減少と関節手術件数の減少、また、これに伴う年間1600万ユーロもの医療費削減をもたらした大きな要因は、抗TNF療法の普及にあることが示唆された。

 ただしHarty氏は、「HIPEは公立病院を対象としたシステムであり、私立病院のデータが含まれていないこと、またデータのvalidationがなされていないことに留意する必要がある」とした。さらに、今回の検討では、個々の患者の詳しい投薬内容やDMARDの併用状況・投与量、罹病期間や過去の関節手術歴といった臨床的な背景因子については考慮されていないため、「入院日数や関節手術件数と強い負の相関が認められたが、抗TNF療法の普及が要因であると証明されたわけではない。因果関係を証明するにはさらなる解析が必要だ」と、Harty氏は語った。

(日経メディカル別冊編集)