米国University of Alabama at BirminghamのJeffrey R. Curtis氏

 関節リウマチ(RA)治療の目標は寛解もしくは低疾患活動性であり、これを目指して治療の強化を図る「Treat to Target(T2T)」戦略が推奨されている。しかし、一部のRA患者においては、低疾患活動性を達成しても患者による全般評価や痛みの評価をわずかに改善しているにすぎず、こうした治療戦略が必ずしも適切ではない可能性が示唆された。米国University of Alabama at BirminghamのJeffrey R. Curtis氏らが、11月10日から14日まで米国ワシントンDCで開催された第70回米国リウマチ学会(ACR2012)で報告した。

 今回の解析には、Consortium of Rheumatology Researchers of North America(CORRONA)レジストリーの患者データが用いられた。同レジストリーは北米全土において展開中であり、RA患者が3万1701人登録されている。解析対象は、抗TNF療法を開始し、その約3カ月後(ベースライン)の受診時の評価において、CDAIが寛解である2.8未満*を達成していないものの、治療開始時より10ポイント以上の改善が認められ、さらにその後9カ月間にわたって同じ抗TNF薬による治療を継続したRA患者102例。

*米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会(ACR/EULAR)による日常診療における寛解基準

 まず、ベースラインからの9カ月間の治療でCDAIによる疾患活動性カテゴリーが改善した群と改善しなかった群でベースラインの患者背景を比較すると、医師による全般評価(平均±標準偏差)が順に22.7±19.6、14.9±11.7と、唯一有意差が認められた(P=0.01)。しかし、それ以外の項目、例えば、年齢、発症年齢、性別、CDAI、mHAQ、DAS28、患者による全般評価(0〜100)、患者による痛みのVisual Analogue Scale(VAS)評価(0〜100)などでは差はなかった。

 102例のうち75例は、ベースラインの受診時における疾患活動性カテゴリーが中等度疾患活動性もしくは高疾患活動性だった。そのうち、その後9カ月間の治療によりカテゴリーが改善した患者は32例(改善群)で、カテゴリーが不変もしくは悪化していた患者は43例(非改善群)であった。

 この改善群と非改善群で9カ月後(抗TNF療法開始から12カ月後)の患者による転帰評価(patient reported outcome:PRO)を比較すると、患者による全般評価は改善群が19.4±21.6、非改善群が32.1±25.6、患者による痛みの評価は順に23.9±24.2 、34.9±22.9と、いずれも改善群の方が有意に良好であった(それぞれP=0.008、P=0.021)。また、患者の全般評価のベースラインからの変化量は−9.6±24.5、0.5±23.1と、改善群の方が有意に良かった(P=0.038)。しかし、mHAQ、ベースラインからのmHAQの変化量、患者の痛みの評価の変化量は差がなかった。

 さらに、年齢、性別、RA罹病期間、ベースラインのCDAIとPROで補正し、改善群と非改善群の平均変化量の差を求めたところ、患者による全般評価は−14.7(95%信頼区間[CI]:−20.4〜−8.9、P<0.001)、患者による痛みの評価は−11.5(95%CI:−17.5〜−5.6、P<0.001)と、いずれも改善群の方が有意に低下していた。一方、mHAQは差が認められなかった(P=0.74)。

 以上の結果からCurtis氏は、「抗TNF療法開始3カ月後に、改善が得られたものの低疾患活動性や寛解に至らなかった患者が、その9カ月後に低疾患活動性を達成しても、非達成と比べPROにおける改善幅は100段階のVASにおいて11〜15程度で、これはよく言ってもわずかなものだ。さらに、その改善は患者の全般評価や痛みの評価であり、身体機能障害では差が見られなかった。したがって、これに該当する一部のRA患者にとっては、低疾患活動性は治療のゴールとして適切ではないのかもしれない」との考えを示した。

(日経メディカル別冊編集)