米国University of Alabama at BirminghamのJohn W. Baddley氏

 生物学的製剤の増加に伴い、生物学的製剤間での切り替えが行われるケースが増えているが、そうした切り替え例などにおける日和見感染症リスクに関するデータは限られている。米国退役軍人の関節リウマチ(RA)患者において検討したところ、日和見感染症の発症率は低く、薬剤間の差は特に認められなかった。この結果は、米国University of Alabama at BirminghamのJohn W. Baddley氏らが、11月10日から14日までワシントンDCで開催された第76回米国リウマチ学会(ACR2012)で発表した。

 対象は、1998〜2011年に米国退役軍人健康庁(Veterans Health Administration)の医療保険により治療を受けた関節リウマチ(RA)患者のうち、抗TNF薬(アダリムマブ[ADA]、エタネルセプト[ETN]、インフリキシマブ[IFX])間での切り替えを行ったか、もしくは新たにアバタセプト(ABA)あるいはリツキシマブ(RTX)の投与を始めた患者とした。ただし、一部の生物学的製剤は血液腫瘍の治療にも使用されるため、同疾患の既往のある患者は対象から除外した。

 これに該当した患者は、抗TNF薬間の切り替え(抗TNF薬群)が3218例、ABAの新規投与開始(ABA群)が544例、RTXの新規投与開始(RTX群)が752例の計3727例(重複あり)。患者背景については、平均年齢が60.8歳、男性比率が86.9%で、合併症罹患率は高血圧が55.8%、糖尿病が26%、慢性閉塞性肺疾患(COPD)が16.9%、悪性腫瘍が9.1%など。これまで感染症による入院経験がない患者が86.8%、感染症での外来受診経験がない患者が48.0%だった。また、ABA群の91%とRTX群の81%は抗TNF薬からの切り替え例で、全体では96%が抗TNF薬の治療経験を有していた。

 日和見感染症の発症は原則としてカルテレビューによって確認したが、その評価が可能だったのは3218例中2921例だった。患者の観察については、日和見感染症の発症、追跡不能、治療中止のいずれかのイベントが発生するまで行った。観察期間(平均±標準偏差)は466.9±523日で、84例(2.9%)の患者で日和見感染症の発症が認められた。Poisson分布を用いて粗発症率を推定すると、100人年当たり1.5件(95%信頼区間[CI]:1.2-1.9)だった。

 疾患の内訳を見ると、帯状疱疹が65例と多数を占めた。その他は、結核、ニューモシスチス肺炎、レジオネラ症、コクシジオイデス症、ヒストプラスマ症、非結核性抗酸菌症、サルモネラ症、ノカルジア症が認められたが、いずれも3例以下だった。

 薬剤別に100人年当たりの粗発症率を推定すると、抗TNF薬群が1.5件(95%CI:1.2-1.9)、ABA群が1.1件(95%CI:0.4-2.6)、RTX群が1.8件(95%CI:1.0-3.2)で、これらの間に有意な差は認められなかった。抗TNF薬群の内訳は、IFXが0.8件(95%CI:0.3-2.1)、ADAが1.6件(95%CI:1.2-2.2)、ETNが1.6件(95%CI:1.0-2.5)だった。

 Baddley氏は以上の結果を、「高齢で男性が多数を占める米国退役軍人ではRA患者の合併症罹患率は高いが、日和見感染症全体の粗発症率は低かった、また、抗TNF薬群、ABA群、RTX群で粗発症率に有意な差は認められなかった」とまとめた。

(日経メディカル別冊編集)