カナダUniversity of British ColumbiaのDiane Lacaille氏

 関節リウマチ(RA)患者は一般住民より平均寿命が短く、疾患活動性の高さが死亡の予測因子となることが知られている。そのため、疾患活動性のコントロールに優れた生物学的製剤には生命予後の改善効果も期待されている。地域の全RA患者を追跡した研究から、生物学的製剤の使用などにより死亡リスクが有意に低下することが示された。この知見は、カナダUniversity of British ColumbiaのDiane Lacaille氏らが、11月10日から14日まで米国ワシントンDCで開催された第70回米国リウマチ学会(ACR2012)で発表した。

 カナダは国民皆保険制度を導入しており、保険償還のデータベースには医療行為の内容や処方薬剤、ICD-9に基づく疾病分類などが記録されている。今回はこのデータベースから、1996年1月から2006年3月までの間にブリティッシュコロンビア州の医療機関を、2カ月間以上の間隔を空けて2回以上、RAのために受診した全患者のデータを入手し、2010年3月まで追跡した。その結果、RA患者は3万7151例であることが分かり、有病率は0.82%だった。

 全RA患者のうち、2010年3月までに1種類以上の生物学的製剤の投与を受けた患者(生物学的製剤群)は2156例。投与薬剤を見ると、いずれかの抗TNF薬を投与されていた患者は97%で、その内訳はエタネルセプトが55%、インフリキシマブが32%、アダリムマブが39%。他の生物学的製剤はリツキシマブが10%、アバタセプトが6%、anakinraが2%だった。

 一方、生物学的製剤は未使用で3種類以上のDMARDによる治療歴があり、最近6か月以内にDMARDを開始、変更したなどの条件を満たすRA患者の中から、生物学的製剤群の個々の患者と年齢、性別、登録年をマッチさせ、さらにプロペンシティスコア(PS)が最も近くなるように患者を抽出し、対照群(2156例)とした。それでも、対照群の方がPSは低く、両群は完全には一致していなかったため、多変量解析の際にはPSの5分位も補正因子に加えた。

 患者背景に関しては、女性比率は両群とも74.7%、年齢も両群とも56.3歳、罹病期間は生物学的製剤群が8.39年、対照群が8.30年、追跡人年は順に4.78人・年、4.30人・年だった。

 結果については、死亡が生物学的製剤群247例、対照群326例であり、前者の方が有意に少なかった(P<0.001)。死因別に見ると、感染症(16例、18例)や悪性腫瘍(71例、83例)では差はなかったが、心疾患(62例、94例)とその他(98例、131例)は生物学的製剤群の方が有意に少なかった(順にP=0.009、P=0.025)。

 次に、Cox比例ハザードモデルを用い、多変量解析によりPSの5分位などで補正したところ、死亡リスクを高める有意な因子として、ステロイド投与量(ハザード比[HR]:2.62)、合併症スコア(HR:1.43)、年齢(HR:1.05)が同定された(いずれもP<0.0001)。一方、生物学的製剤使用(HR:0.24)、メトトレキサート投与量(HR:0.48)、女性(HR:0.64)は死亡リスクを下げる有意な因子だった(いずれもP<0.0001)。

 感度分析として、対照群の抽出条件を「3種類以上のDMARDによる治療歴があるなど」から「1種類以上のDMARDによる治療歴がある」に緩和した場合、生物学的製剤使用の死亡HRは0.25となった(P<0.0001)。さらに、「1種類以上のDMARDによる治療歴がある」に加えPSのマッチングも行わない場合、生物学的製剤使用の死亡HRは0.31だった(P<0.0001)。

 以上の結果よりLacaille氏は、「一般住民ベースのRAコホートにおいて、生物学的製剤の使用は死亡リスクを有意に低下させることが示された。この結果は、RA患者、医療提供者、そして医療政策の策定者に重要な示唆を与えるものだ」と語った。

(日経メディカル別冊編集)