米国Boston University School of MedicineのMaureen Dubreuil氏

 乾癬性関節炎(PsA)や乾癬(PsO)では非罹患者に比べて糖尿病のリスクが高いことが分かった。また、これらの患者では非罹患者に比べて肥満や喫煙、飲酒といった生活習慣上のリスクも高い傾向にあることが示された。一方、関節リウマチ(RA)では有意な糖尿病リスクの上昇は見られなかった。米国Boston University School of MedicineのMaureen Dubreuil氏らが、11月10日から14日までワシントンDCで開催された第76回米国リウマチ学会(ACR2012)で発表した。

 PsOは、年齢や肥満、喫煙などの従来の危険因子とは独立した糖尿病のリスク因子だ。PsA患者はPsO患者に比べて肥満有病率が高いが、PsA患者の糖尿病リスクについては過去に報告がない。また、RA患者の糖尿病リスクについては、リスクが増えないという報告や50%増大するという報告が混在している。そこで今回Dubreuil氏らは、PsO患者、PsA患者、RA患者の糖尿病リスクと、肥満や喫煙、飲酒などのリスク因子について検討した。

 対象は、The Health Improvement Network(THIN)の患者データ730万例とした。THINは、英国の一般開業医(GPs)による医療記録を網羅する巨大データベースであり、匿名化された患者の血圧やBMIなどの身体データとともに、罹病疾患名や処方薬に関する詳細な情報が記載されている。THIN登録後、糖尿病、PsO、PsA、RAを12カ月以上発症せず、その後PsO、PsA、RAと診断された例を、糖尿病発症もしくは死亡、研究期間の終了まで追跡した。研究対象期間は1986年1月から2010年5月までとした。

 PsA、PsOについては疾患コードが初めて記録された時点で、またRAについては、疾患コードが初めて記録され、引き続いて抗リウマチ薬が1剤以上処方された時点で発症とみなした。既存の研究から、これらの基準による陽性反応的中率(PPV)はそれぞれ85%、90%、96%とされる。糖尿病発症は、インスリンや経口糖尿病薬などの糖尿病薬が処方されたときとした。

 対照群は、各疾患群ごとに、その疾患がなく、性、年齢、登録年が一致した登録者を10対1(患者1人につき対照10人)で設定した。

 この結果、PsA群は4196例(48.7歳、女性50.1%)、非PsA群4万1795例(48.7歳、女性50.2%)、PsO群5万9281例(49.2歳、女性51.2%)、非PsO群58万1248例(48.9歳、女性51.2%)、RA群1万1158例(58.4歳、女性68%)、非RA群11万375例(58.2歳、女性68%)となった。

 BMIはPsA、PsO、RAの各罹患群がそれぞれの対照群よりも有意に高かった(いずれもP<0.05)。喫煙状況は、現在喫煙率がPsO群28.3% vs非PsO群21.0%、RA群25.1% vs 非RA群18.6%と、罹患群で有意に高かった。飲酒状況では、現在飲酒率がPsA群65.7% vs 非PsA群61.7%、また、PsO群62.7% vs 非PsO群57.8%と、罹患群で有意に高かった(いずれもP<0.05)。

 PsAの糖尿病発症率について見ると、非PsA群では平均追跡期間5.7年における糖尿病発症率が4.3/1000人・年、PsA群では平均追跡期間は5.9年で、発症率は7.3/1000人・年と罹患群で高かった。

 年齢、性別、登録期間で調整した糖尿病発症のハザード比は、非PsA群を基準とするとPsA群で1.72(95%信頼区間[CI]:1.46〜2.02)と有意に高かった。上記の共変量にBMI、喫煙、飲酒を加えた場合のPsA群のハザード比は1.43(95%CI:1.20〜1.70)、さらに追跡期間12カ月以内のグルココルチコイド使用、Charlson併存疾患指数で調整しても、ハザード比は1.33(95%CI:1.09〜1.61)と、有意差を保っていた。

 PsOでも同様に、非PsO群の平均追跡期間5.7年において、糖尿病発症率は4.7/1000人・年、PsO群では、平均追跡期間は5.8年で、発症率は6.4/1000人・年と罹患群で高かった。全共変数で調整しても、非PsO群に比したPsO群の糖尿病発症ハザード比は1.21(95%CI:1.15〜1.27)と、有意に高かった。

 一方RAでは、非RA群で平均追跡期間5.5年において、糖尿病発症率は5.7/1000人・年、非RA群では、平均追跡期間5.5年、発症率は6.3/1000人・年と罹患群で高かった。年齢、性別、登録期間で調整した糖尿病発症のハザード比は、非RA群を基準とするとRA群で1.12(95%信頼区間[CI]:1.01〜1.25)と有意に高かったが、上記の共変量にBMI、喫煙、飲酒を加えた場合のハザード比は1.00、さらにグルココルチコイド、Charlson併存疾患指数で調整したハザード比は0.94と低く、有意差も消失した。

 これらの結果からDubreuil氏は、「PsA患者とPsO患者における糖尿病リスクは、非罹患者に比べ有意に高かったが、RA患者においては肥満や喫煙などで調整した結果、非罹患者に比したリスクの上昇が認められなかった。また、PsA患者やPsO患者では肥満率が高く、喫煙や飲酒といった生活習慣のリスク因子も高い傾向にあった」と結論し、「PsA患者とPsO患者においては、減量、禁煙などの介入によって糖尿病リスクを低減できる可能性がある」と考察した。

(日経メディカル別冊編集)