英国Arthritis Research UK Epidemiology UnitのKimme L Hyrich氏

 抗TNF薬は、関節リウマチ(RA)患者のリンパ腫発生リスクを高める可能性が指摘されている。1万5000例以上のRA患者を5〜6年間追跡したBritish Society for Rheumatology Biologics Register(BSRBR)の解析結果によると、その可能性は低そうであることが分かった。同研究グループを代表し、英国Arthritis Research UK Epidemiology UnitのKimme L Hyrich氏が、11月10日から米国ワシントンDCで開催中の第70回米国リウマチ学会(ACR2012)で発表した。

 BSRBRは2001年に英国で開始された前向きのコホート研究である。今回の解析は2001〜2009年に登録された患者で、2010年9月末までの追跡データを用いた。対象は、抗TNF薬による治療を新たに始めたRA患者1万1987例(コホート1)と、コホート1と年齢、性、喫煙歴などの背景がほぼ同様で生物学的製剤以外のDMARDで治療を行ったRA患者3465例(コホート2)の計1万5452例。追跡期間の中央値は、コホート1が6.4年、コホート2が4.5年であり、追跡人・年はそれぞれ6万6353人・年、1万3186人・年であった。

 英国の抗TNF薬使用ガイドラインでは、2種類以上のDMARDを試みても高疾患活動性が持続する場合にのみ、抗TNF薬の使用が許されている。つまり、コホート1はすでに2剤以上のDMARD治療歴をもつ患者、それに対して、コホート2は初めてもしくは2剤目のDMARDを使い始めた早期の患者も含まれているため、罹病歴の中央値はコホート1が11年、コホート2が6年と、前者が長かった。また、平均年齢は順に56歳、60歳、女性比率は76%、73%、これまでの喫煙歴は60%、64%であった。

 両コホートに対する追跡は、(1)担当医師に対する質問票(3年目までは6カ月ごと、それ以降は1年ごと)、(2)患者に対する質問票および患者日誌(3年間に6カ月ごと)、(3)National Health Service(NHS)のがんおよび死亡データベースへの定期的な照会(死亡まで継続)という3つの方法で行った。

 いずれかのルートによりリンパ腫であるとの報告があった場合、文書にて発症時期や発症状況の詳細を確認し、他に明らかな発症誘因があるケースや、治療開始時にすでにリンパ腫を発症していたケースを除外した。その上で、病理組織検査にてリンパ腫との確定診断が得られたケースを「リンパ腫の新規発症」としてカウントした。

 リンパ腫の新規発症はコホート1が64例、コホート2が20例であり、10万人・年当たりの発症例数は96例、152例と、コホート1の方が少なかったが(ハザード比[HR]は0.61)、有意な差はなかった。また、さまざまな背景因子で補正した後のHRは 1.13となったが、やはり有意差は認められなかった。これを非ホジキンリンパ腫に限った場合も結果は同様で、有意な差はなかった(補正前のHRは0.66、補正後は1.26)。

 以上からHyrich氏は、「抗TNF療法によってRA患者のリンパ腫発症リスクが高まることはなかった」と結論したが、「長期的な安全性を証明するためには、さらなる追跡が必要だろう」と語った。

(日経メディカル別冊編集)