カナダUniversity of TorontoのNigil Haroon氏

 抗TNF療法は強直性脊椎炎(AS)による炎症を抑え、痛みや症状を改善する効果的な治療法であるが、脊椎変形の進行抑制効果の有無についてはわかっていなかった。そうしたなか、AS患者のX線画像の変化を前向きに追跡し、脊椎変形の進行に関連する因子を探索した結果、抗TNF療法の継続により進行が抑制されることが確認された。カナダUniversity of TorontoのNigil Haroon氏らが、11月10日から13日まで米国ワシントンDCで開催されていた第70回米国リウマチ学会(ACR2012)で発表した。

 本検討はカナダおよび米国の5施設で行われ、対象は改訂New York基準を満たすAS患者とした。ベースライン時のX線画像でbamboo spine像がすでに認められる症例は脊椎変形の経時的な評価が困難であるため、解析対象から除外し、最終的に334例を登録した。

 対象患者の平均年齢は40.7±13.8歳、平均罹病期間は16.4±12.8年、発症時の平均年齢は24.2±9.9歳であり、男性比率は77%、HLA-B27陽性例は83.4%だった。ベースライン時の平均CRPは1.48±1.96mg/dL、ESRは17.7±19.5mm/時。また、抗TNF療法歴のある患者が201例、ない患者が133例であった。

 これらの患者の脊椎を2年ごとにX線撮影し、mSASSS(modified Stoke AS Spine Score)を用いて変形の程度を評価し、その変化を追跡した。なお、スコアリングは3人の独立した読影者が盲検下で行った。ベースライン時の平均スコアは9.6±14.5 unitsで、2年後の評価においてmSASSSの増加(≧2 units)を認めた患者は30.5%であった。

 多変量解析の結果、脊椎変形進行の有意な予測因子として、ベースライン時のmSASSS、ベースライン時のESR、喫煙指数(pack-years)、抗TNF療法の有無の4つが同定された。抗TNF療法実施の脊椎変形進行のオッズ比(OR)は、propensity scoreによる補正前が0.498(95%信頼区間[CI]:0.274-0.905、P=0.022)、補正後が0.427(95%CI:0.204-0.891、P=0.023)だった。すなわち、脊椎変形進行のリスクは抗TNF療法により、半分以下に減少することが示された。

 抗TNF療法歴のある症例において、発症から治療開始までの年数別にmSASSSの増加を見ると、10年以下の群(81例)の10年超の群(120例)に対するオッズ比は0.36(95%CI:0.15-0.91、P=0.03)と、10年以内に抗TNF療法を始めていると脊椎変形進行のリスクが有意に低かった。

 また、罹病期間に対する抗TNF薬投与期間の割合で層別すると、50%超群(26例)の50%以下群(175例)に対するオッズ比は0.2(95%CI:0.04-0.98、P<0.05)と、抗TNF薬の投与期間が50%超であれば脊椎変形進行のリスクが有意に低かった。

 上記の結果を基に、すべての患者に発症から10年以内に抗TNF療法を開始し、それを継続したと仮定し推定すると、約80%の患者で完全に脊椎変形の進行が抑制されるとの結果が得られた。

 Haroon氏は、抗TNF療法の脊椎変形抑制効果をプロスペクティブな検討によって示した初めての報告であると述べ、「20歳代でASを発症した患者が50歳代になっても、30年前と変わらぬ姿勢と身体機能を維持することも夢ではないだろう」と結んだ。

(日経メディカル別冊編集)