デンマークUniversity of CopenhagenのMerete L. Hetland氏

 抗TNF療法を続けているにもかかわらず、関節破壊が進行してしまう患者とそうでない患者はどこが違うのだろうか。デンマークで2000年に開始された関節リウマチ(RA)患者レジストリーであるDANBIOで、抗TNF療法下にて2年間のX線画像データが入手可能であったRA患者932例をレトロスペクティブに解析したところ、ベースライン時の総Sharpスコア(TSS)、年齢、IgM型リウマトイド因子(IgM-RF)、ステロイド併用投与の4つが関節破壊進行の予測因子として同定された。デンマークUniversity of CopenhagenのMerete L. Hetland氏らが、11月10日から米国ワシントンDCで開催されている第76回米国リウマチ学会(ACR2012)で報告した。

 Hetland氏らの研究グループは、抗TNF薬による治療を開始した患者の7割はその後2年間の関節破壊の進行が完全に抑制されていたことを、2010年の欧州リウマチ学会(EULAR2010)で報告している。今回は、進行を来す約3割の患者の拾い上げにつなげるべく、ベースライン時のリスク因子の同定を試みた。

 対象は、DANBIO登録患者のうち、抗TNF療法を受け、ベースライン時と治療開始から約2年後のX線画像データが入手できた932例。患者の75%は女性であり、年齢の中央値は57歳(範囲:19-88歳)、罹病期間の中央値は6年(同:1-70年)だった。ベースライン時の臨床データについては、DAS28-CRPの中央値が5.4(四分位範囲[IQR]:4.6-6.1)、TSSの平均値±標準偏差が30±38、中央値が14(IQR:2-44)であり、IgM-RF陽性率は79%だった。

 抗TNF療法開始時の選択薬に関しては、インフリキシマブが59%、エタネルセプトが18%、アダリムマブが23%であった。

 これらの患者のうち、抗TNF療法中にベースライン時に比べ治療開始2年後のX線画像で関節破壊の進行(TSS変化量>0)が27%で認められた。

 多変量ロジスティック回帰分析をベースライン時のデータを基に行った結果、TSS、年齢、IgM-RF、ステロイド併用投与の4つが関節破壊進行の独立した有意なリスク因子として同定された。各因子のオッズ比(OR)は、TSS(1ポイント増当たり)が1.004(P=0.049)、年齢(1歳増当たり)が1.03(P=0.0002)、IgM-RF陽性が1.86(P=0.006)、ステロイド併用投与が1.39(P=0.0002)であった。

 これらはいずれもRA患者全般における関節破壊の危険因子として知られている。すなわち、これに該当するハイリスク患者では、抗TNF薬を投与していても、そうでない患者に比べ、関節破壊が進行する可能性が高いと言える。

 しかし、TSSや年齢のORは1をわずかに上回る程度であり、統計学的には有意であっても、「臨床的にはさほど大きな問題ではない」とHetland氏は指摘する。従来療法では関節破壊が進行するリスクが高い高齢者やベースライン時においてすでに関節破壊が生じている患者においても、抗TNF療法下であればリスクが低減できると言えるだろう。また、同氏の研究グループは、2010年の米国リウマチ学会(ACR2010)にて、抗TNF療法を受けたRA患者における最も強力な関節破壊進行の危険因子は、抗TNF療法を中止することであることを報告している。したがって、上記の関節破壊進行の危険因子を持つ患者には注意する必要があるものの、抗TNF療法を継続することが大切だと考えられる。

(日経メディカル別冊編集)