東京女子医科大学の中島亜矢子氏

 生物学的製剤の投与を受けた関節リウマチ(RA)コホートと、一般人口および医療機関に通院中のRA患者コホートの死亡率を比較した日本人対象の研究で、生物学的製剤によって死亡リスクが上昇することはないことが示唆された。東京女子医科大学の中島亜矢子氏らが、シカゴで11月9日まで開催されていた米国リウマチ学会(ACR2011)で報告した。

 本検討で対象とした生物学的製剤投与コホートは、東京女子医科大学など日本国内の6施設で、1剤以上の生物学的製剤投与を受けたRA患者2697人である。1剤目として使用された生物学的製剤は、インフリキシマブが41.3%、エタネルセプトが39.0%、アダリムマブが12.7%、トシリズマブが6.3%だった。

 登録患者の背景は、女性が83.6%で、ベースラインの年齢は58.0歳、罹病期間は6.9年、DAS28-CRPは4.9、HAQは1であった(いずれも中央値)。メトトレキサート使用患者は77.7%、ステロイド使用患者は54.2%であり、その使用量(中央値)はそれぞれ8mg/週、4mg/日だった。また、主な罹病歴は、肺結核3.3%、悪性新生物4.5%、虚血性心疾患1.4%、脳血管障害1.3%、消化管出血1.0%などだった。

 このコホートでは、2010年5月15日までの追跡期間中(6940.9人・年)に38件の死亡が確認された。主な死因は呼吸器疾患18例(うち肺炎8例)、悪性新生物5例などだった。また、520例(20.0%)は追跡期間中に追跡不能になった。

 追跡不能例について重み付けした上で、日本人一般人口と比較した標準化死亡比(SMR)は1.08(95%信頼区間:0.77‐1.47)で、両者の死亡率に差は認められなかった。

 また、東京女子医科大学が10年来、データ収集を続けている実臨床のRA患者データベースであるIORRAコホートとの比較でも、SMRは0.93(95%信頼区間:0.66‐1.28)で、ここでも有意差はみられなかった。

 次に、死因別にみたSMRは、一般人口との比較で肺炎が4.18(95%信頼区間:1.81‐8.24)、肺炎を含む呼吸器疾患が9.41(95%信頼区間:5.58‐14.87)であり、有意なリスクの上昇が認められた。一方で、悪性新生物のSMRは0.29(95%信頼区間:0.10‐0.69)と、有意に低率だった。

 また、生物学的製剤投与コホートにおいて、年齢、性別、DAS28、罹病期間、メトトレキサート投与量、ステロイド投与量の各因子を説明変数、死亡を従属変数とした多変量解析を行ったところ、年齢、性別(男性)、ステロイド投与量の3つが有意な危険因子として同定された。

 これらの結果から、生物学的製剤投与のRAコホートにおける死亡リスクは一般人口と変わらず、生物学的製剤の使用によって日本人RA患者の死亡リスクが増加することはなかったことが示された。一方、呼吸器疾患に関連した死亡リスクの上昇は明らかで、とりわけ、今回死亡リスク上昇の危険因子として同定された高齢者や男性、高用量のステロイド使用者などには、注意して治療に当たることが必要となるだろう。

(日経メディカル別冊編集)