米Brigham and Women's 病院のJaime E. Hart氏

 大気汚染の原因となる家の暖房などから排出されるSO2は、ACPA陽性リウマチ性関節炎の発症リスクを、有意に増大することが分かった。SO2空気中濃度が5μ/m3増加することで、10年後の同発症リスクは1.18倍になるという。リウマチ性関節炎全体やリウマトイド因子陽性RAについても、有意差はないものの、SO2による発症リスクの増加傾向が認められた。

 これは、米Brigham and Women's 病院のJaime E. Hart氏らが、スウェーデン・RAに関する疫学調査(Swedish Epidemiological Investigation of Rheumatoid Arthritis;EIRA)と米看護師健康疫学研究(US Nurses' Health Study;NHS)のデータを元に、ケースコントロール試験を行い明らかにしたもの。11月5日から9日までシカゴで開催された米国リウマチ学会(ACR2011)で発表した。RAと大気汚染についての研究は、これが初めてという。

 同研究グループは、EIRAのRA患者1330人とその対照群の2235人、さらにNHS被験者9万1203人(うち762人がRAを発症)について研究を行った。EIRAの被験者は、1990〜2009年に、米国リウマチ学会基準(1987)でRAの診断を受けた、ストックホルム郡在住の18〜70歳だった。

 大気汚染については、車の排気ガスなどが起源の粒子状物質で、空気動力学的直径が10ミクロン以下のもの(PM10)、同2.5ミクロン以下のもの(PM2.5)、窒素酸化物(NO2、NOx)と、家の暖房などから排出される二酸化硫黄(SO2)に着目した。大気汚染レベルについては、過去のデータを元にした居住地ごとの予測値と、被験者の居住地を元に地域の交通量などから予測値を割り出した。

 EIRAデータについてはロジスティック回帰分析を、NHSデータについては、コックス比例ハザードモデルを用い、大気汚染とRA、またリウマトイド因子陽性、ACPA陽性RAのそれぞれについて、関連を調べた。大気汚染への被爆時期については、EIRAデータは発症の5年前、10年前、20年前について、NHSデータは同6年前と10年前について、それぞれ分析した。

 その結果、EIRA、NHSの両データで、PM10、PM2.5とRA発症リスクの増加は、いずれの被爆時期においても認められなかった。

 ただし、EIRAデータでは、SO2への発症10年前、20年前の被爆が、ACPA陽性RAの発症リスクと関連がある傾向が認められた。発症10年前に、SO2空気中濃度が5μ/m3増加することによる、ACPA陽性のRA発症に関するオッズ比は1.18(95%信頼区間:1.02‐1.37)だった。RA全体やリウマトイド因子陽性RAについてもまた、発症10年前のSO2被爆は、有意差はなかったが、発症と関連する傾向は認められた。

 被験者の教育レベル別に見てみると、発症5年、10年前の大気汚染への被爆は、同じ被ばく量でも、大学を卒業していない人の方がRA発症リスクの増大につながる傾向が認められた。一方、NHSデータでは、SO2とRA発症リスク増大との関連は認められなかった。この点についてHart氏は、NHSの被験者である看護師は、より教育レベルが高いため、大気汚染が同発症リスクとつながりにくかったのかもしれない、とコメントした。

(日経メディカル別冊編集)