米国Geisinger医療センターのRasa Bozaite-Glucosniene氏

 メトトレキサート(MTX)とTNFα阻害薬関節リウマチRA)治療のキードラッグであるこの2つの薬剤には、どちらも心血管疾患CVD)リスク低下作用がある可能性が示された。その効果は薬剤投与期間が長いほど高く、いずれも2年前後の使用に伴って約70%ものリスク低下が得られるという。米Geisinger医療センターのRasa Bozaite-Glucosniene氏らが、11月5日から9日までシカゴで開催された米国リウマチ学会(ACR2011)で報告した。

 MTXやTNFα阻害薬にCVDリスク低下作用があるとの報告は、初めてではない。だが、過去の報告では、炎症や脂質プロファイルなどのCVDリスク因子の影響については考慮されていなかった。今回Bozaite-Glucosniene氏らは、人口統計学的因子のほか、高血圧、脂質異常症、糖尿病の合併の有無、そしてESRやCRP、リウマトイド因子といった交絡因子についても補正した上で、MTXおよびTNFα阻害薬の使用とCVDの関係を検討した。

 対象は、2001年から2009年に米Geisinger Health System(GHS)の電子カルテに記録されたRA患者のうち、CVDの合併がないことが確認された1718人。RA診断時の年齢(中央値)は57歳、女性の比率は73%であり、62%にMTX、33%にTNFα阻害薬が投与されていた。

 3.4年(中央値)の追跡期間中に確認されたCVDの発症は計127件で、その内訳は冠動脈疾患48件、脳卒中/一過性脳虚血発作45件、末梢血管障害/腹部大動脈瘤34件だった。

 このうち90件はMTX非使用例(710人)、37件はMTX使用例(1119人)での発症であり、患者1000人・年当たりのイベント発症はMTX非使用群が23.2件、MTX使用群が14.6件と、後者の方が有意に低率だった(RR:0.63、95%信頼区間:0.43‐0.93)。

 さらに、MTX使用群の患者をMTX使用歴によって四分位を求めると、CVD発症リスクは使用歴が長くなるほど低下し、最も使用歴の長い群(>40カ月)ではMTX非使用群に比べ、実に86%ものリスク低下が認められた(RR:0.14、95%信頼区間:0.05‐0.34、P<0.001)。

 また、MTX使用歴の中央値(22カ月)で患者を2分した場合、22カ月未満の群ではMTX非使用群との差は認められなかった(HR:1.15、95%CI:0.71‐1.86)が、22カ月を超える群では72%のリスク低下が認められた(HR:0.28、95%信頼区間:0.16‐0.49)。

 一方、TNFα阻害薬非使用群(1241人)と使用群(588人)の比較では、CVD発症件数は110件対17件、患者1000人・年当たりの発症は20.8件対14.9件と、後者の方が低率だったが、統計的に有意なリスク低下は認められなかった(RR:0.72、95%信頼区間:0.43‐1.19)。

 しかし、TNFα阻害薬の使用歴に基づく四分位での比較では、MTXと同様、使用歴が長くなるほどCVD発症リスクが低下する傾向がみられ、最も使用歴の長い群(>35カ月)では、TNFα阻害薬非使用群に比べて93%のリスク低下が認められた(RR:0.07、95%信頼区間:0.01‐0.52、P=0.010)。

 同様に、TNFα阻害薬使用歴の中央値(17カ月)で患者を2分した比較では、17カ月未満の群ではTNFα阻害薬非使用群との差を認めなかった(HR:1.04、95%信頼区間:0.57‐1.88)が、17カ月を超える群では69%のリスク低下が認められた(HR:0.31、95%信頼区間:0.15‐0.63)。

 以上の結果から、MTXとTNFα阻害薬にはどちらもCVD抑制作用があり、継続的な使用により効果的にリスク低下を図ることができる可能性が示唆された。

 その機序についてBozaite-Glucosniene氏らは、推測の域を出ないとした上で、「MTXとTNFα阻害薬はいずれも抗動脈硬化作用を有するという報告があるので、これが抗炎症作用と相まって、CVDを抑制するのではないか」と考察した。

(日経メディカル別冊編集)