共同演者のDaniel Aletaha氏

 ACR/EULAR新寛解基準を構成する2通りの基準のうち、Boolean評価ベースの基準患者による全般評価PGA)が条件に達しないために寛解と判断されなかった患者のうちの約2割は、もう1つの基準である指標ベースの基準を満たしていることが示された。これらの患者の多くは、医師の全般評価MDGA)で<1cmと評価されており、PGAとの食い違いが大きいことも分かった。「ACR/EULAR新寛解基準のニアミス」を明らかにしたもので、オーストリアのウイーン医科大学のPaul Studenic氏らが、11月5日から9日までシカゴで開催中の米国リウマチ学会(ACR2011)で発表した。

 ACR/EULAR新寛解基準は、2つの評価ベースの基準から寛解を定義している。まずBoolean評価ベースの基準では、腫脹関節数(SJC)と圧痛関節数(TJC)、さらにC反応性タンパク質(CRP;mg/dL)とPGA(cm)がすべて1以下であることと定めている。一方、指標ベースの基準は、簡易疾患活動性指標(SDAI;SJC、TJC、CRP、PGA、および医師による全般評価〔MDGA〕の線形和)が3.3以下であることとしている(臨床研究での寛解基準)。ただし、RA疾患活動性に無関係にPGAが高い患者では、これらの基準を満たせないことが議論の的となっていた。このため演者らは、ACR/EULAR新寛解基準におけるPGAについて、臨床上の妥当性を評価することを目的に患者コホート研究を行った。

 方法は前向き観察研究で、RA外来患者データベースからRA患者の受診データをすべて取り出した。まず、Boolean評価ベースの基準で必要な4つのうち3つを満たす患者の割合を調べた。これらの患者のうち、PGA、SJC、TJC、あるいはCRPのそれぞれの指標が基準に達しなかった患者の割合を算出した。次に、指標ベースの基準を満たした患者のうち、PGAのためにBoolean評価ベースの基準に達しなかった患者の割合を調べた。

 同時に、寛解とみなせなかった理由として、例えば二次的線維筋痛症などのようにRA疾患活動性とは無関係に高くなる可能性があるPGAについても評価した。そのために、医師によって「≦1cm」と判断された患者と、「≦1cm」と判断されなかった患者を調べることにより、PGAとMDGAの食い違いを調べた。

 検討の結果、795人の患者(女性80%、リウマチ因子〔RF〕陽性67%、平均罹患期間:8年)の8242回の受診データを抽出した。これらの患者のうち52%は、最低1回は受診していた。

 Boolean評価ベースの基準の4つのうち3つだけを満たした患者を調べたところ、基準を満たしていなかった項目で最も多かったのはPGAだった(61%;n=249;平均PGA:3.6cm)。同様に、SJCは20%、CRPは13%、TJCは7%だった。

 PGAが条件を満たさなかったためにBoolean評価ベースの基準に達しなかった患者(249人)のうち44人(17.7%)は、指標ベースの基準を満たしていた。つまり、Boolean評価ベースの基準だけで評価した場合、これらの患者は寛解とは判断されなかったことになる。この点を演者らは、「ACR/EULAR新寛解基準のニアミス」と表現した。

 一方、PGAのためにBoolean評価ベースの基準に達しなかった患者(249人)のうち、166人(66.7%)においてPGAとMDGAに食い違いがあった(平均の食い違い:3cm)。さらに、これらの患者のうち41人(24.7%)は、MDGAが1以下であり、かつ指標ベースの基準を満たしていることも分かった。なお、これらの指標ベースの基準を満たしていた患者では、指標ベースの基準を満たさない患者(平均PGA=4cm)よりも有意に痛みが少なく、PGAが低く(平均PGA=1.8cm)、PGAとMDGAの食い違いが小さいという特徴があった。同様の結果は、実臨床でCRPを除外したBoolean評価ベースの基準および指標ベースの基準を用いた場合でも得られたという。

 これらの結果から演者らは、「PGAのためにBoolean評価ベースの基準に達しなかった患者の3分の2は、医師の全般評価で<1cmと評価されていることが分かった」と結論。「指標ベースの基準によれば、これらの患者の3分の1は寛解にあると判断できたが、PGAがわずかに1より大きいことが他の変数が1より小さいことで補われるためだと考えられる」と考察した。その上で、「Boolean評価ベースの基準、およびわずかだが指標ベースの基準の両方で寛解とされない患者の中には、RA疾患活動性に無関係にPGAが大きい場合があることを考慮すべきだ」とも指摘した。

(日経メディカル別冊編集)