米ウィスコンシン大学のDavid J Vanness氏

 TNF阻害薬は、関節リウマチ(RA)治療における生物学的製剤のファーストラインとして幅広く使用されている。近年、TNF阻害薬の他にも、IL-1R拮抗薬や抗IL-6R抗体、CTLA4-Ig融合蛋白、抗CD20抗体など新たな生物学的製剤が登場し、TNF阻害薬でコントロール不良な患者における新たな選択肢となっている。しかし、これらの薬剤すべてを直接比較した無作為化比較試験(RCT)は存在しない。そこで米ウィスコンシン大学のDavid J Vanness氏らは、Mixed-treatment comparison(MTC)の手法を用い、比較する薬剤の組み合わせが異なるRCTを統合してメタ解析を行った。その結果、最初のTNF阻害薬でコントロール不良な患者において、別のTNF阻害薬に切り替えた場合の有効性は、TNF阻害薬以外の生物学的製剤に切り替えた場合と同等か、あるいはそれ以上の効果が期待できることが示された。研究は11月7日から11日まで米国アトランタで開催された第74回米国リウマチ学会(ACR 2010)で報告された。

 通常のメタ解析では、たとえば薬剤Aと薬剤Bを比較した試験のみを集め、統合して解析を行うが、MTCでは、薬剤Aと薬剤Bを比較した試験、薬剤Bと薬剤Cを比較した試験のように、比較する薬剤の組み合わせが異なる複数の試験を統合して解析する。これにより、薬剤Aと薬剤Cの比較データを導き出すことができる。

 Vanness氏らはMTCを利用し、最初のTNF阻害薬治療でコントロール不良だったRA患者に対して、TNF阻害薬(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、certolizumab pegol[日本未承認] 、golimumab[日本未承認]のいずれか)、IL-1R拮抗薬(anakinra[日本未承認])、抗IL-6R抗体(トシリズマブ)、CTLA4-Ig融合蛋白(アバタセプト)、抗CD20抗体(リツキシマブ)を投与した場合の、ACR20、ACR50、ACR70を比較した。

 過去の9つのシステマティックレビューで取り上げられた研究と、MEDLINEの検索によって新たに見出された研究の中から、上記の生物学的製剤についての検討で、3〜12カ月後のACR改善率が記載されており、英語で記述された論文を抽出。この中から、第II相臨床試験と安全性の検討を主目的とした研究やアジアの単一施設で行われた研究を除外し、37研究を解析対象とした。試験形態の内訳は、RCTが32件、オープンラベル試験が1件、前向きコホート研究が3件、レジストリー研究が1件だった。

 患者総数は2万4291人、平均罹病期間は8.06年、登録時の平均HAQスコアは1.56だった。これらの患者のMCTメタ解析の結果、最初のTNF阻害薬からの切り替えによって得られる推定ACR20は、TNF阻害薬66.5%、anakinra49.9%、アバタセプト54.3%、リツキシマブ64.1%、トシリズマブ66.6%と算出された。

 同様にACR50は、TNF阻害薬43.1%、anakinra27.7%、アバタセプト31.4%、リツキシマブ41.6%、トシリズマブ43.4%、ACR70は、TNF阻害薬22.9%、anakinra13.0%、アバタセプト15.2%、リツキシマブ22.3%、トシリズマブ23.2%と推定された。

 最初のTNF阻害薬から切り替える薬剤として、TNF阻害薬とリツキシマブ、トシリズマブのACR改善率は、ACR20、ACR50、ACR70ともほぼ同等だったが、anakinraとアバタセプトの改善率はやや低率だった。この傾向は、長期罹病患者(20,677人)に限定した解析や、観察研究を除外した解析でも同様だった。

 以上の結果から、TNF阻害薬治療でコントロール不良の場合の次の選択肢(セカンドライン)として、2剤目のTNF阻害薬を用いることは、TNF阻害薬と異なる作用メカニズムの生物学的製剤の使用と同等もしくはそれ以上の有効性が期待できることが示唆された。


(日経メディカル別冊)