米国ペンシルベニア州・ダンヴィル、Geisinger Medical CenterのJana L. Antohe氏

 炎症性サイトカインであるTNF(腫瘍壊死因子)は、関節リウマチ(RA)の病態やインスリン抵抗性、心血管疾患に関与しているとされる。そのためTNF阻害薬の投与によってインスリン感受性が改善し、RA患者における糖尿病リスクが軽減すると期待されている。米国ペンシルベニア州・ダンヴィル、Geisinger Medical CenterのJana L. Antohe氏らは、RA患者の電子的健康記録をもとにした発端コホート研究を行い、TNF阻害薬の使用によって、糖尿病リスクが60%低下する可能性を示した。この成果は11月7日から11日に米国アトランタで開催された第74回米国リウマチ学会(ACR 2010)で報告された。

 研究対象は、民間医療保険のGeisinger Health System(GHS)の電子健康記録(HER)で、2001年1月1日から2008年3月31日の間に、新規にRAと診断された患者1539人。このうち、糖尿病と判断された患者252人を除く1287人を解析対象とした。新規の糖尿病発症は、2010年の米国糖尿病協会(ADA)基準を用いて確認した。

 解析では、TNF阻害薬を使用した群(使用群)と使用しなかった群(未使用群)に分け、時間依存Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、2群間の糖尿病発症リスクを比較した。性別、年齢、人種、体格指数(BMI)、高血圧や高脂血症の既往、赤血球沈降速度(ESR)、C反応性タンパク質(CRP)、リウマトイド因子(RF)、抗シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)やステロイド、ヒドロキシクロロキン、メトトレキサート(MTX)の使用を共変量とし、これら共変量によって調整したハザード比を算出した。

 TNF阻害薬を使用した患者は403人、使用しなかった患者は884人だった。TNF阻害薬の使用期間中央値は35.2カ月だった。

 患者全体の年齢中央値は61歳、女性が73%を占め、白人が97%、BMI中央値は28.6kg/m2、高血圧の患者が48%、高脂血症が23%だった。またRF陽性が80%、抗CCP陽性は53%、最大ESR中央値は29mm/h、最大CRP中央値は8.1mg/dLで、TNF阻害薬使用群のほうが、未使用群に比べて、RF陽性率、抗CCP陽性率、ESR値、CRP値が高かった。

 NSAIDの使用率は全患者の76%、ステロイドは87%、ヒドロキシクロロキンは34%、MTXの使用が60%だったが、TNF阻害薬使用群のほうが、NSAIDとステロイド、MTXを使用している率が高く、ヒドロキシクロロキンの使用は未使用群で多かった。

 糖尿病を発症したのは、未使用群では41人、使用群は15人で、発症率はそれぞれ1000人・年当たり22.0人と10.5人になった。共変量で調整された使用群のハザード比は、未使用群に対して、0.40(95%信頼区間0.16-0.98、p=0.046)と、有意に糖尿病発症リスクが低いことが示された。

 以上の結果から、「RA患者を対象にした発端コホートにおいて、TNF阻害薬の使用は、糖尿病リスクの60%低下に関連していた。これは心血管疾患のリスクが高いRA患者の治療において、重要な結果である」とAntohe氏は述べた。

(日経メディカル別冊)