欧米では、数年前より関節症性乾癬(PsA)の治療にTNF阻害薬が用いられており、その有用性が実証されている。一方で、一部の患者では治療応答性が低いことも知られており、その解明が待たれている。バルセロナHospital Clinic e IDIBAPSのJulio Ramirez氏らは、TNF阻害薬の治療応答性に影響する因子の1つとして、免疫複合体のクリアランスと関連するとされるFcγ受容体遺伝子多型にあるのではないかと推測。PsA患者のFcγ受容体ジェノタイプと治療応答性の関係を2年間にわたって追跡した。その結果、PsA 患者ではFcγ受容体遺伝子多型の影響は限定的であることを、11月7日から11日に米国アトランタで開催された第74回米国リウマチ学会(ACR 2010)で報告した。

 Fcγ受容体(FCGR)は、免疫グロブリン(IgG1)のFc領域と結合する受容体で、IIA、IIB、IIC、IIIA、IIIBの5つのファミリーからなる。FCGRにはいくつかの遺伝子多型の存在が報告されているが、そのうちIIA遺伝子のR131H多型(FCGR2A-R131H)とIIIA遺伝子のF158V多型(FCGR3A-F158V)はIgGへの親和性に関連する多型で、関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデスの患者には親和性の低いタイプの対立遺伝子(アレル)を持つ人が多いことが報告されている。Ramirez氏らは、この2つの多型をPsAにおけるTNF阻害薬の治療応答性原因遺伝子と考え、今回の検討を計画した。

 対象は、PsAの分類基準(CASPAR:ClASsification criteria for Psoriatic ARthritis)を満たし、メトトレキサート15mg /週以上の投与で疾患コントロール不良なPsA患者103人。男女比はほぼ1:1であり、年齢49歳、罹病期間が12年、TNF阻害薬治療開始時のDASは4.62だった(いずれも中央値)。

 Ramirez氏らは、これらの患者に対し、2つの遺伝子のジェノタイピングを行った。その結果、FCGR2Aの遺伝子型はHHが32人(31.1%)、HRが49人(47.6%)で、低親和性のRRは22人(21.4%)だった。また、FCGR3AについてはVVが21人(20.4%)、VFが56人(54.4%)で、低親和性のFFは26人(25.2%)だった。

 次にRamirez氏らは、これらの患者にTNF阻害薬(インフリキシマブ、エタネルセプトまたはアダリムマブ)を投与し、3、6、9、12および24カ月後のEULAR改善基準を評価した。その結果、24カ月間の追跡期間を通し、85%以上の患者でmoderate response、60%以上の患者でgood responseの応答が認められた。

 遺伝子型ごとのEULAR改善基準を比較すると、RRの患者群はHHまたはHRの患者群に比べ、6カ月時点のModerate以上の反応が有意に低かった(91% vs 73%;p=0.03)。しかし、3、9、12および24カ月時点においては、両群の治療応答性に有意な差は認められなかった。また、VVまたはVFの患者群とFFの患者群の比較では、どの時点でも差は認められなかった。

 ただし、FCGR2AアレルがHHホモかつFCGR3AアレルがVVホモの患者群と、FCGR2AアレルがRRホモかつFCGR3AアレルがFFホモの患者群を比較すると、いずれの時点においてもHH+VV患者群の方が、治療応答性が高い傾向を示していた。

 以上の結果から、PsA患者におけるTNF阻害薬の治療応答性にFCGR2A-R131H多型とFCGR3A-F158V多型が及ぼす影響はきわめて限定的であると同時に、既にRA患者で報告されていたFCGR遺伝子多型の検討結果とは全く逆の傾向がみられることが判明した。その理由については明らかではないが、Ramirez氏らは、「PsAとRAの病態の差異、さらにはIgGFc受容体とTNF阻害薬の相互作用の複雑さが原因ではないか」と推測している。

(日経メディカル別冊)