Arthritis Research Centre of CanadaのLindsay C. Burns氏

 生物学的製剤の使用により関節リウマチ(RA)患者における悪性新生物の発生リスクが約3倍に高まるというメタ解析の結果がBongatzらによって報告されたのは2006年のことだ。彼らが解析対象とした試験はすべて無作為化比較試験(RCT)で、長期にわたるリスクの検出に向いているコホート研究は含まれていなかった。Arthritis Research Centre of CanadaのLindsay C. Burns氏らは、リンパ腫リスクの検出に的を絞り、システマティック文献レビューとメタ解析を行った結果、生物学的製剤の使用に伴うリンパ腫発生リスクの上昇は認められなかったことを、11月7日から11日に米国アトランタで開催された第74回米国リウマチ学会(ACR 2010)で報告した。

 システマティック文献レビューの検索範囲は、1990年1月から2010年5月までに発表された生物学的製剤の安全性評価を目的とした臨床研究、または有効性評価を目的とした臨床研究のうち、安全性についても言及している論文だ。

 Burns氏らはまず、MEDLINEとEMBASE、INTERNATIONAL PHARMACEUTICAL ABSTRACTSのデータベースを利用した検索と、関連文献のリファレンス欄からの手作業により、解析候補となる論文をピックアップした。

 該当論文のタイトル、アブストラクト、本文の順で査読し、(1)RCTまたは観察研究、(2)12週以上の追跡期間、(3)観察研究の場合は対象例数が100例以上、(4)RA患者またはRA患者を含む集団を対象とし、RA患者サブグループの解析結果が示されている、(5)生物学的製剤を評価対象としている、(6)リンパ腫の発生数・発生率が明記されている、(7)相対リスク、またはオッズ比とその95%信頼区間が明記されている、という7つの要件をすべて満たす論文の絞り込みを行った。なお、論文の本文は、2人が独立して査読を行った。

 その結果、データベース検索では2万76報の論文が候補にあがったが、うち1万7944報は重複した論文や二次的なデータを扱った論文(レビューなど)であることがタイトルから推測されたため対象から除外し、残る2132報に手作業で拾い上げられた14報を加えた2146報を最終的な査読に供した。

 これらの論文は、アブストラクトの査読によって32報に絞り込まれた。さらに本文を査読した結果、最終的に4報の論文がメタ解析の対象となった。これら4つの研究はすべてコホート研究だった。対象となった患者の総数は1万9323人、使用された生物学的製剤は、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、anakinra(日本未承認)の4剤だった。

 4つの試験を合わせた追跡人・年は11万9433人・年で、追跡期間は127〜158カ月、その間のリンパ腫発生件数は180件だった。解析の結果、リンパ腫発生のオッズ比は1.20、95%信頼区間は0.80-1.60となり、有意なリスク上昇は検出されなかった(p=0.787)。なお、4つの研究に有意な不均質さ(heterogeneity)や出版バイアスは認められず、解析は妥当なものと考えられた。

 以上の結果により、今回のメタ解析からは、RA患者に対する生物学的製剤の使用がリンパ腫の発生リスクを高めるという事実は確認されなかった。しかしBurns氏は、4報という少ない研究での解析であること、比較的新しい生物学的製剤のリンパ腫発生リスクに与える影響は未知数であることなどを課題としてあげ、今後もさらなる検討が必要とした。

(日経メディカル別冊)