横浜市立大学の小林幸司氏

 TNF阻害薬は、関節リウマチ(RA)患者の臨床症状を改善するだけでなく、関節破壊の進行を抑制し、一部の患者においては破壊された関節の修復をももたらすことが、近年多くの臨床試験によって示されている。しかし、これらは臨床試験という限られた条件下での知見であり、日常診療の場における関節修復の実態は明らかではない。そこで横浜市立大学の小林幸司氏らは、TNF阻害薬による治療を受けたRA患者84人のX線画像を検討して骨びらんの修復度を観察するとともに、修復と関連する因子をレトロスペクティブに解析。骨びらん修復の成否はDAS28の改善と相関することを示した。研究結果は、11月7日から11日まで米国アトランタで開催されている第74回米国リウマチ学会(ACR2010)において報告した。

 本検討の対象は、米国リウマチ学会のRA分類基準(1987 ACR RA分類基準)を満たし、TNF阻害薬により1年以上の治療が施された患者84人(インフリキシマブ38人、エタネルセプト30人、アダリムマブ16人)。平均年齢は54.3歳、女性比率は90.5%、平均罹病期間は7.4年だった。

 これらの患者のTNF阻害薬治療前後の手関節と足関節のX線画像を、個々の臨床データや撮影日などを伏せて熟練した画像診断医1人が読影し、骨びらん修復の有無を評価した。修復の定義は、(1)破壊された関節の皮質骨の再生、(2)びらんの一部もしくは全体がふさがっている、(3)軟骨下骨硬化と骨棘の形成、のいずれか1つ以上が認められる場合とした。

 その結果、84人中7人(8.3%)の患者で1カ所以上の骨びらんの修復が認められた。修復が認められた患者(修復群;n=7)と修復の認められなかった患者(非修復群;n=77)の年齢、性、罹病期間、登録時のDAS28-CRPなどの背景因子には、有意な差は認められなかった。

 総シャープスコア(平均値)は、非修復群では0.8ポイント悪化、修復群では2.1ポイント改善していた(p<0.01)が、治療前後のDAS28-CRPの変化量(平均値)を比較すると、非修復群の-1.6に対して修復群では-2.5だった(p<0.05)。

 以上の結果から、日常診療においても、TNF阻害薬により疾患活動性が低く制御されれば、骨びらんの修復がもたらされることが示唆された。

(日経メディカル別冊編集)