フィンランドTampere大学病院のVappu Rantalaiho氏

 関節リウマチ(RA)患者は機能障害によって早期退職を余儀なくされることも少なくない。近年、RA治療が著しく強化されたが、それによってRA患者の就業状況が改善したかどうかは調べた新たな研究で、TNF阻害薬投与群では早期退職率が有意に低下していることが示された。フィンランドTampere大学病院のVappu Rantalaiho氏らが、11月7日から11日まで米国アトランタで開催されている第74回米国リウマチ学会(ACR 2010)で報告した。

 Rantalaiho氏らは、フィンランド社会保険研究所が運営する全国レジストリーから、2000年1月〜2007年12月に登録された、新規かつ退職前のRA患者のデータを抽出した。対象を年代順に2年ごとの4つのコホートに分け、就業障害による退職の有無を2008年12月末日まで追跡した。また、薬物療法の開始日を指標日とし、指標日からの3カ月間の治療内容と、その後のTNF阻害薬(エタネルセプトとアダリムマブ)による治療開始日を調べた。

 解析対象は7909例(女性73%)で、リウマトイド因子(RF)陽性例が61%を占めた。4つのコホートを年代順に比較すると、指標日から3カ月間の抗リウマチ薬単剤療法は53%から36%に低下し、抗リウマチ薬併用療法の施行率が39%から58%に増加した。また、メトトレキサート(MTX)の使用率は33%から63%に増加した。

 指標日からの2年間におけるRA関連の就業障害による退職率を、年齢、性別、RF陽性率で補正したところ、年代順に8.8%、9.3%、7.2%、4.7%となり、有意な線形の低下トレンドが認められた(p<0.001)。

 Cox比例ハザードモデルを用いた検討では、登録年(ハザード比:0.67、95%CI 0.64-0.72)、高齢(ハザード比:1.06、95%CI 1.05-1.07)、男性(ハザード比1.53、95 %信頼区間1.33-1.75)、RF陽性(ハザード比:1.17、95%CI 1.01-1.34)が早期退職の有意な影響因子であることが明らかになった。RF陰性例では、MTX投与例は他の抗リウマチ薬の単独投与例に比べて障害退職のリスクが高かったが、RF陽性例では初期治療内容の違いは、その後の退職率に影響を及ぼさなかった。

 8年間の追跡期間中、278例にTNF阻害薬(エタネルセプト、アダリムマブ)が投与された。年齢、性別、RF、初期治療、登録年で補正したところ、TNF阻害薬投与群の早期退職率は11.0 %となり、TNF阻害薬の投与を受けなかった群の14.4%に比べて有意に低かった(p=0.024)。

 以上の検討からRantalaiho氏は、2000年以降、積極的な治療戦略が採用されるようになり、早期RA患者が障害により早期退職を余儀なくされる機会は減少したと結論した。通常の抗リウマチ薬による初期治療が効果不十分の場合、TNF阻害薬を使用することで、RA患者の就業能を維持できると示唆した。

(日経メディカル別冊)