オランダ・アムステルダムJan van Breemen InstituteのAlper M van Sijl氏

 関節リウマチ(RA)患者は心血管疾患の発症リスクが高く、その理由として慢性的な炎症反応の存在が示唆される。TNFα阻害薬は強力な抗炎症作用を有しており、RA患者の心血管疾患の発症リスクを軽減できると期待される。そこでオランダ・アムステルダムJan van Breemen InstituteのAlper M van Sijl氏らは、TNFα阻害薬の投与の有無が、RA患者の心血管疾患の発症リスクにどのような影響を及ぼすかを検討、米国アトランタで11月7日から11日まで開催されている第74回米国リウマチ学会(ACR 2010)で報告した。

 解析対象としたコホートは、オランダのRA患者を対象とした前向きコホート研究であるCARRÉ研究とBiologicals-cohortの2つ。CARRE研究の登録者には、登録時に生物学的製剤を使用していた患者はほとんど含まれておらず、生物学的製剤の使用例は今回の解析から除外した。一方、Biologicals-cohortは、TNFα阻害薬で治療を開始した成人RA患者が登録されている。

 両コホートから、古典的な心血管疾患のリスク因子、RA関連因子、心血管疾患の罹病、心血管死に関するデータを抽出して解析を行った。心血管疾患としては、心筋梗塞、脳血管障害、一過性脳虚血発作、末梢動脈の血行再建術、冠動脈血行再建術を含めた。群間の心血管疾患の発症リスクの違いを、Cox比例ハザードモデルを用いて比較した。

 Biologicals-cohortの登録者におけるTNFα阻害薬使用群は377例で、平均追跡期間は2.1年だった。一方、CARRE研究の登録者のTNFα阻害薬非使用群は322例で、平均追跡期間は2.7年間だった。それぞれ793患者・年、888患者・年追跡したことになる。

 心血管疾患の発症率は、TNFα阻害薬使用群では10.1/1000患者・年、非使用群では24.8/1000患者・年だった。Cox比例ハザードモデルを用いた解析では、心血管疾患の発症リスクは、TNFα阻害薬使用群で58%有意に低かった(ハザード比:0.42、95%CI 0.18-0.97)。年齢、性別、心血管疾患既往歴で補正後も、TNFα阻害薬使用群ではリスクが約30%低かったが、有意性は消失した(ハザード比:0.71、95%CI 0.29-1.72)。

 一方、全死亡の発生率は、TNFα阻害薬使用群で4.1/1000患者・年、非使用群では11.3/1000患者・年で、非使用群で高かった。

 以上の検討からvan Sijl氏は、TNFα阻害薬を使用することでRA患者の心血管疾患発症リスクは低下すると考えられるが、結論を下すにはさらに検討が必要と述べた。

(日経メディカル別冊)