イスラエル・テルアビブ医療センターのOri Elkayam氏

 抗TNFα薬の使用において最も懸念される事項のひとつは、細胞性免疫の低下に基づく感染リスクの増加である。しかし、特定の病原体に対して獲得される液性免疫に及ぼす抗TNFα薬の影響については知られていない。イスラエル・テルアビブ医療センターのOri Elkayam氏らは、サンフランシスコで開催された米国リウマチ学会(ACR2008)において、インフリキシマブ(IFX)投与を受けた関節リウマチ(RA)患者を対象に、3つの流行性疾患の病原体に対する抗体プロファイルを調べた研究結果を報告、IFXがこれらに対する抵抗力の低下をもたらすことはなかったことを示した。

 対象は、イスラエルの2つの医療施設にてIFX投与を受けたRA患者連続52症例(うち女性36例、平均年齢54歳)である。平均罹病期間は15±9年であり、37例(71%)がリウマトイド因子(RF)陽性であった。IFXは標準的な投与スケジュールに従い、1回当たり3mg/kgが投与された。なお、42例(80%)の患者はメトトレキサート(MTX)を併用し、22例(42%)はプレドニゾロン(PSL)を併用していた。

 Elkayam氏らは、これらの患者のIFX投与直前および6カ月後の血清を採取して冷凍保存し、麻疹風疹ポリオの3疾患の病原体に対する抗体検査を行った。検査法は、麻疹および風疹についてはELISA法にてウイルス特異抗体価を測定し、ポリオについては3種の生ウイルスを用いたマイクロ中和試験にて抗体の有無を評価した。

 その結果、抗麻疹ウイルス抗体価は、IFX投与前が平均3.67±1.31IU/mL、投与6カ月後が平均3.87±1.31IU/mLであり、投与前後とも感染防御に有効とされる基準値(>0.7IU/mL)を上回っていた。同様に、抗風疹ウイルス抗体価は、IFX投与前が平均169.50±140.54IU/mL、投与6カ月後が平均197.0±154.56IU/mLであり、ともにイスラエルにおける基準値(>31IU/mL)を上回った。また、抗ポリオウイルス抗体は、3種いずれも陽性であり、6カ月後にもその状態が維持されていた。

 これらの抗体プロファイルは、患者の年齢や性別、罹病期間、RF因子陽性・陰性にかかわらずほぼ一定していた。また、MTXやPSLの使用が抗体プロファイルに影響を及ぼすこともなかった。

 以上より、RAを長期にわたって罹患している患者においても、麻疹、風疹、ポリオの3疾患に対する免疫力は維持されており、IFXがこれに影響を及ぼすこともないことが確認された。今回検討された3つの流行性疾患は、いずれもアウトブレイクすれば重大な被害が予想される疾患であるだけに、今回の知見は心強いものといえよう。