ノルウェー・オスロのアーケル大学病院のKristin Angel氏

 関節リウマチ(RA)強直性脊椎炎(AS)乾癬性関節炎(PsA)などのリウマチ性疾患患者の心血管疾患(CVD)罹患率は、一般人口の数倍も高い。ノルウェー・オスロのアーケル大学病院のKristin Angel氏らは、リウマチ性疾患とCVDをつなぐカギは、関節炎症血管病変の双方に深く関与するサイトカインTNFαにあるのではないかと推測。リウマチ性疾患患者における抗TNFα薬治療前後の各種血管性状マーカーの変化を調べた結果、同治療は動脈壁硬化の指標である脈波伝播速度(PWV)を低下せしめることを見出した。研究成果は、サンフランシスコで開催されている米国リウマチ学会(ACR2008)で報告した。

 本検討は、抗TNFα薬にて治療したリウマチ性疾患患者35例(抗TNFα薬治療群;RA 17例、AS 12例、PsA 6例)と、抗TNFα薬の適応病態ながらツベルクリン反応が陽性だったり、個人的な事情のために抗TNFα薬投与を延期した患者25例(対照群;RA 12例、AS 9例、PsA 4例)の比較研究である。両群の年齢(46.6±12.2歳 vs. 51.1±14.5歳)、男女比(18/17 vs. 8/17)、罹病期間(11.5±9.8年 vs. 9.6±8.9年)、ベースライン時のCRP、ESR、DAS28(RA患者のみで検討)、自覚症状、他覚所見には、いずれも有意な差はみられなかった。

 Angel氏らは、これら両群の患者に対し、抗TNFα薬(アダリムマブ15例、エタネルセプト12例、インフリキシマブ8例)による治療もしくはそれまでどおりの治療を3カ月継続したうえで、治療前後のPWV、Augmentation Index(AI)平均動脈圧(MAP)心拍数CRPDAS28(RA患者のみ)の変化を比較した。

 その結果、抗TNFα薬治療群においてのみPWVの有意な低下(-0.46±0.13m/s、p=0.002)が認められ、対照群と比較しても有意差(p=0.002)が認められた。

 さらに、CRPおよびDAS28において、抗TNFα薬治療群では有意な低下を認めたものの(ΔCRP:-9.2±20.3mg/dL、p=0.011、ΔDAS28:-0.73±0.91、p=0.002)、対照群ではいずれにおいても有意な変化が認められなかった。これらマーカーを両群間で比較したところ、CRPについては有意差が認められた(p=0.006)。そこで、抗TNFα薬治療群において、PWVの変化量に対するCRPの変化量およびDAS28の変化量の相関関係を解析したところ、いずれにおいても有意な相関は見出せなかった。

 多変量解析を行った結果、PWVの低下に関連した因子として、抗TNFα薬による治療とMAPの低下が見出された。

 以上の結果は、リウマチ性疾患に対する抗TNFα薬治療は、炎症の抑制とは独立した動脈硬化改善効果が期待できることを示唆している。