米シカゴのラッシュ医学校のNajia Shakoor氏

 運動靴の靴底に切り込みを入れるだけで変形性膝関節症の発症や増悪を予防できる可能性がある――こんな興味深い研究成果が報告された。ゴム底に適切な切り込みを入れることで動きの自由度が増し、変形性膝関節症の悪化要因となる膝の内転モーメントが減少するという。米シカゴのラッシュ医学校のNajia Shakoor氏らが、米サンフランシスコで開催中の米国リウマチ学会(ACR2008)のポスターセッションで10月26日に報告した。

 Shakoor氏らは、変形性膝関節症患者30人を対象に歩行テストを実施し、靴の違いによる膝関節の最大内転モーメントの違いを計測した。

 対象者は男性10人、女性20人、平均年齢は60±10歳。X線診断を実施した症候性の変形性膝関節症患者で、平地歩行時の痛みがビジュアルアナログスケールで30mm/100mm以上の患者とした。うち20人はKellgren-Lawrenceグレード2、10人は同グレード3だった。

 対象者には平底の運動靴を履いた状態と、同じ靴に切り込みを入れて履いた状態で、日常の速度で歩行してもらった。カメラと多素子感圧センサーを用いて、体重と身長で正規化した膝内転モーメントのピーク値を求め、対応のあるT検定(paired-T test)を用いて靴の違いを比較した。なお、切り込みは柔軟性を増すように調整した位置と長さで入れられている。

 検査の結果、切り込みが入った靴では、通常の靴に比べて歩行時の最大内転モーメントが4%有意に減少した(2.65±0.71 vs. 2.76±0.65%体重×身長、p=0.034)。検査時の歩行速度(1.12±0.17 vs. 1.13±0.16m/秒、p=0.349)や歩幅歩調下肢関節の可動範囲などに違いはみられなかった

 研究グループは、柔軟性のある靴と動きを制約する靴で、膝内転モーメントに違いがあることを示唆する研究を進めてきた。Shakoor氏は、「臨床的な有用性を示すためには介入試験が必要だが、生体工学の観点からみて、平底で柔軟な靴が動的な膝関節の負荷低減に有効であることは明らか」としていた。本研究の成果を基に、変形性膝関節症などの患者に適した靴の開発・商品化も期待できそうだ。



【補足・訂正】
表題・本文中に「靴底に十字の切り込みを入れる」としましたが、本研究の提示例では大きな十字の切り込みに加え、2カ所の切り込みを入れています。また靴の柔軟性を上げるのが目的であるため、靴底の性状により、切り込みの位置や数は変更される可能性があります。このため、上記のように訂正します。