スウェーデン・カロリンスカ研究所環境医学研究部門のMarie Gunnarsson氏

 関節リウマチ患者の心筋梗塞罹患率は、診断前は上昇していないが、発病後は最初の10年間で心筋梗塞の発症および死亡のリスクはおよそ2倍に増加することが分かった。1995年から継続しているスウェーデン関節リウマチ登録研究による成果で、スウェーデン・カロリンスカ研究所環境医学研究部門のMarie Gunnarsson氏(写真)らが10月27日、サンフランシスコで開催されている米国リウマチ学会ACR2008)で発表した。

 心血管疾患(CVD)の罹患率と死亡率は関節リウマチ患者(RA)では増加することが報告されているが、関節リウマチの発病と進行がどのようにかかわって心血管疾患の罹患率と死亡率が増加するのかはほとんど知られていない。演者らは、この問題意識から、心筋梗塞(MI)の発症、心筋梗塞による死亡および全死亡の相対リスクを、関節リウマチと診断されてからの期間の長さごとに評価する研究を行った。

 対象は、1995年より継続されているスウェーデンの関節リウマチ登録研究から、新たに関節リウマチと診断された患者7954人(症状が出て18カ月未満)。

 比較するコホートとして、一人の患者につき一般住民から年齢、性別、暦年、居住区域、結婚の有無が合致する5人を選定した(3万8913人)。心筋梗塞の発症についての情報は、全国的なスウェーデン病院退院記録(2006年まで)より検索した。心筋梗塞による死亡は、死亡原因登録(2005年まで)から、また全死因による死亡は人口登録(2008年1月まで)から検索した。

 関節リウマチと診断されるまでの心筋梗塞暦のリスクについての評価には、合致した変数を取り入れた条件付き回帰モデルを用いた。糖尿病、高血圧については補正を行った。関節リウマチと診断された後の心筋梗塞の罹患率、死亡率の評価にはCox 比例ハザード回帰モデルを用いた。心筋梗塞罹患率については糖尿病と高血圧について補正を行った。

 フォローアップ開始時の平均年齢は57歳で、69%は女性だった。関節リウマチコホートについてのフォローアップは3万2247人・年、一般住民のコホートについては19万8877人・年に達した。

 フォローアップの平均期間は両コホートとも心筋梗塞に関しては5.0年、心筋梗塞が原因の死亡については4.7年、全死因による死亡については5.8年だった。

 解析の結果、関節リウマチと診断されるまでは、関節リウマチ患者群とコントロール群とでは心筋梗塞歴に差がなかった(オッズ比1.0、95%信頼区間0.9-1.2)。一方、関節リウマチと診断されて以降は、心筋梗塞発症の相対リスクは継続的に増加した(1年までは1.4、1〜4年までは1.7、5〜9年までは1.8)。心筋梗塞による死亡も、関節リウマチ診断後5年以降から増加した(1〜4年までは1.0、5〜9年までは1.5、10年以降は2.0)。全死因による死亡については、5〜9年までは1.2、10年以降は1.4という成績だった。

 これらの結果から演者らは、「関節リウマチと診断されるまでは、他の報告にもあるように、関節リウマチ患者の心筋梗塞罹患率は上昇していなかったが、発病後は最初の10年間で、心筋梗塞の発症および死亡のリスクはおよそ2倍に増加することが分かった」と結論付けた。