タフツ・メディカルセンターのChenchen Wang氏

 中国の伝統的な運動として知られる太極拳は、変形性膝関節症の治療に有効であることが示唆された。太極拳に取り組むグループと通常のストレッチを行うグループに分けて、効果を検討したところ、太極拳群で痛みや身体機能などに有意な効果を認めた。タフツ・メディカルセンター(米、ボストン)のChenchen Wang氏(写真)らが10月26日、サンフランシスコで開催されている米国リウマチ学会(ACR2008)で発表した。

 Chenchen Wang氏らは、太極拳には筋肉の機能やバランス、柔軟性を強化するだけでなく、痛みやうつ状態、不安などを和らげる効果が期待できるとし、変形性膝関節症の治療に適しているとの仮説をたて、比較試験に取り組んだ。

 対象は、年齢>55歳、BMI≦40kg/m2で、前月のほぼ毎日膝の痛みを認め、脛骨大腿骨変形性関節症でK/Lグレード≧2の条件に該当する40人。対象者は、太極拳(伝統的な様式から作成した10種類の変形型。治療用に改良)を実施する太極拳グループ、またはストレッチとウェルネス教育に取り組むグループに無作為に割り付けた。

 その上で、60分間の運動治療を週2回、12週間実施した。主要評価項目は、12週目でのWOMAC疼痛スコアの変化とした。副次的評価項目は、WOMAC機能、医師と患者による総合評価(VAS)、椅子起立時間、バランステスト、膝の固有受容感覚(バイオメトリクス・エレクトロゴニオメーター)、うつ(CES-D指数)、自己効力感、健康状態に関連した生活の質(SF-36)に設定した。

 これらの評価を24週目と48週目でも実施し、反応の永続性を調べた。太極拳グループと対照グループは、tテストを使って包括解析によって比較した。

 参加者は、平均年齢が65歳(SD:7.8)、平均罹病期間が10年(SD:7.6)、平均BMIが30.0kg/m2(SD:4.8)、平均K/Lグレードが4、75%が女性、70%が白人だった。両グループで、治療開始前の患者背景、X線スコア、結果測定値に有意な差はなかった。運動治療から得られる効果に対する参加者の治療開始前の期待についても、グループ間に差はなかった。運動スコアに対する成果の期待は、太極拳=4.1(SD:0.6)、対照=4.3(SD:0.4)だった。

 12週間の評価への出席率は、太極拳グループで85%、対照グループで89%だった。太極拳の参加者は、痛み、身体機能、うつ、自己効力感、健康状態に有意な改善を示した。たとえば、WOMAC疼痛スコア(VAS、0−500mm)の12週目での変化は、太極拳グループは−157.3(95%信頼区間:−198.5〜−116)だったのに対し、対照群では−38.5(同:−87.2〜10.3)と有意(p=0.0004)に太極拳グループの方が減少していた。

 また、12週目以降も太極拳運動を続けた患者からは、WOMAC疼痛とWOMAC機能に永続的な効果が見られた。WOMAC疼痛での両グループの差は、24週目で−150.2(SD:116.6、p=0.04)、48週目で−185.3(SD:54.1、p=0.001)となり、WOMAC機能でのグループ間の差は、48週目で−572.7、SD:257.8、p=0.02)となった。

 これらの結果から演者らは、「太極拳は重度の変形性膝関節症の患者の痛みと身体障害の治療に効果があることが示唆された」と結論付けた。さらに「今後も研究を継続し、太極拳による治療法についての理解を深める必要がある」と締めくくった。