関節リウマチ患者の心筋梗塞リスクに及ぼすステロイドの影響を調査したFrederick Wolfe氏

 関節リウマチ(RA)患者では、一般人口に比して心筋梗塞(MI)の発症率が1.5〜2倍程度も高率であることが数々の疫学研究において明らかにされている。しかし、健康状態が一般人口と大きく異なるRAでは、そのリスクを正確に評価することは難しい。米国立リウマチ疾患データバンク(NDBRD)のFrederick Wolfe氏(写真)らは、RA同様に健康状態が障害される非炎症性リウマチ疾患(NIRD)患者を対照群に据えるなど、情報収集・分析力を活かしたNDBRDならではのアプローチでその実態を明らかにし、11月9日、米国リウマチ学会・学術集会の一般口演で報告した。

 解析対象は、1996〜2006年にNDBRDに登録されたRA患者1万7712例(RA群)とNIRD患者5081例(NIRD群)の計2万2818例である。平均3年間(0.5〜8.5年)の追跡期間にMIの発症を認めた症例は、RA群271例、NIRD群56例であり、相対リスク(RR)は前者が有意に大きかった(RR1.5[95%信頼区間、1.1-2.0])。両者の差は、既知のMI危険因子(年齢、性、大学卒の学歴、高血圧、糖尿病、喫煙、低用量アスピリンの服用、併存疾患数)について補正すると、さらに大きくなった(RR1.6[1.1-2.3])。

 次に同氏らは、RA治療薬(プレドニゾン、抗TNFα薬、メトトレキサート、レフルノミド、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、ロフェコキシブ、セレコキシブ)とMIの影響を明らかにすべく、RA患者群の上記薬剤使用者と非使用患者群のMI発生率を比較するコホート内ケースコントロールスタディを行った。

 その結果、検討薬剤のうちプレドニゾンのみが有意なMIリスク予測因子として浮上した(OR1.6[1.2-2.0]、p=0.001)。また、プレドニゾン使用者では非使用者に比べて高血圧の合併率が有意に高かったうえ(56.3% vs 52.8%、p=0.021)、プレドニゾンの使用は高血圧ならびに糖尿病の発症リスクとも有意に相関していた(ハザード比:高血圧 1.2[1.1-1.4]、p=0.004、糖尿病1.7[1.3-2.2] 、p=0.000)。

 プレドニゾン使用者を除外した場合、NIRD群に対するRA群のMI発症リスクはハザード比1.3[0.9-1.9]となり、両群の間に有意差は認められなかった。

 以上より、ステロイドの常用はRA患者のMI発症リスクを高める危険因子であることが強く示唆された。しかし、ステロイドの使用はMIの強力な危険因子である高血圧や糖尿病の発症リスクとも相関していたことから、ステロイドの使用に伴うMI発症率の上昇は、これらの疾患の発症促進を介した間接的なものである可能性も考えられた。