抗TNFα薬とAMI発症率との関係を解析したGurkirpal Singh氏

 急性心筋梗塞(AMI)と関節リウマチ(RA)はいずれも炎症を基盤とする疾患であり、両者はしばしば合併する。米Stanford大学のGurkirpal Singh氏(写真)らは、両疾患の発症機序に共通する重要なサイトカインであるTNFαに着目。これを抑制する抗TNFα薬とAMI発症率との関係を調べた結果、抗TNFα薬とメトトレキサート(MTX)を併用したRA患者のAMI発症率は、MTX単剤での治療患者のほぼ5分の1であったと報告した。11月9日、米国リウマチ学会・学術集会の一般口演で発表した。

 RA患者にAMIの発症が多いことは古くから指摘されていた。その頻度は年々増加していたが、2000年頃を境に減少に転じている。Singh氏らは、減少のタイミングが最初の抗TNFα薬であるインフリキシマブ(IFX)の登場時期と一致していることに注目。抗TNFα療法が何らかの形でRA患者のAMI減少に寄与しているのではないかとの仮説を立てた。

 そこで同氏らは、カリフォルニア州が運営するMedicaid(米国の公的医療扶助制度)プログラム・MediCalのデータベースから、1999年1月〜2005年6月にRAと診断され、抗TNFα薬、MTX、その他の抗リウマチ薬(DMARD)のいずれかを単剤もしくは併用投与された18歳以上の全患者のデータを抽出。投与薬剤とAMI発症率との関連について検討した。

 抽出された患者総数は1万9233例(平均年齢54.7歳、うち女性79.4%)であり、1万3383例がMTX、1万4958例が他のDMARD、4943例が抗TNFα薬の投与歴を有していた。

 コホート全体(7万4006人・年)で確認されたAMIの発症は441件であり、うち8%が致死性であった。各治療薬群のMTX単独群に対するAMI発症の相対リスク(RR)は、抗TNFα薬単独群では、1.17(95%CI:0.50‐2.75)、抗TNFα薬+DMARD群では、1.78(95%CI:0.60-5.27)、DMARD単独(DMARD同士の併用を含む)群では、0.88(95%CI:0.60‐1.31)、DMARD+MTX群では0.93(95%CI:0.54‐1.62)でほぼ同等であり、有意な増加も減少も認められなかった。しかし、抗TNF薬+MTX群のRRはMTX単独群に対して0.20(95%CI:0.05-0.88)となり、80%もの有意な低下が認められた(p<0.03)。

 すなわち、抗TNFα薬は単独あるいはDMARDsとの併用投与ではAMIリスクを低下させなかったが、MTXと併用した場合は著明なリスク低下がもたらされる可能性が示唆された。

 今回の報告はレトロスペクティブな観察に基づくものであり、今後の大規模での検討結果が待たれる。しかし、全ての研究の出発点は「観察」にある。今回の結果は抗TNFα薬の新たな可能性に期待を抱かせるものだと言えよう。