スウェーデン・カロリンスカ大学病院のJohan Askling氏

 抗TNF療法患者の死亡リスクに与える影響について検討した研究で、抗TNF薬の使用は、癌を発症した後の死亡リスク上昇にはつながらない可能性が示された。11月9日、米国リウマチ学会・学術集会の一般口演でスウェーデン・カロリンスカ大学病院のJohan Askling氏が発表した。

 抗TNF療法による長期的な発癌リスクに関しては、まだはっきりした見解が得られていない。Askling氏らは、本年6月に開催された第8回欧州リウマチ学会・年次集会(EULAR2007)において、関節リウマチ(RA)に対する抗TNF療法によって発癌総リスクは増加せず、癌腫によってリスク増加のみられるものと、逆に減少するものとがあることを報告している(既報を参照)。今回は、さらに癌発症後の死亡リスクについて提示した。

 研究グループは、スウェーデンの3つの重複する全国登録(早期RA登録、入院患者登録、外来患者登録)をもとに抽出した全国的な大規模RA患者コホートのうち、1998年1月時点で生存していた患者を、抗TNF療法群と非抗TNF療法群とに分け、2005年12月時点での各種癌発症率と癌発症後の死亡率について検討した。

 その結果、抗TNF治療群(6066例)では、170例がなんらかの癌を発症し、うち63例が死亡、一方の非抗TNF療法群(6万1585例)では3347例に発癌が認められ、1792例が死亡した。非抗TNF治療群に対する抗TNF治療群の相対リスク(Cox回帰解析)は0.8(95%信頼区間:0.5-1.2)だった。

 Askling氏によると、この相対リスクは、性別、発癌年齢、抗TNF治療の開始年代、発癌診断時の抗TNF治療の有無、癌の有病期間の違いにより、大きく変動することはなかった。

 さらにそれぞれの癌種ごとの死亡相対リスクをみても、結腸・直腸癌が0.7(95%信頼区間:0.2 -2.6)、乳癌が0.7(同0.2-2.8)、前立腺癌が0.6(0.1-5.3)、肺癌が0.8(0.4-1.6)、その他の固形癌が0.8(0.3-2.2)と、いずれにおいても抗TNF治療群における死亡リスクの増大はみられなかった。

 以上の結果からAskling氏らは、「まだ予備的な成績ではあるものの、今回の結果からは、抗TNF治療が癌発症後の患者の生存率低下につながるとは考えにくい」と結論付けた。