米スタンフォード大学のGurkirpal Singh氏

 最近のシクロオキシゲナーゼ(COX)-2阻害薬の使用減少が、非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)由来の消化管障害の増加を招いていることが明らかになった。高齢の関節炎患者を対象にした米国の大規模コホート研究により示されたもので、米スタンフォード大学のGurkirpal Singh氏らが11月8日、米国リウマチ学会のプレナリーセッションで報告した。

 COX-2を選択的に阻害するCOX-2阻害薬は、胃潰瘍などの消化管障害を起こしにくい鎮痛薬として、リウマチ患者などの治療に利用されてきた。しかし、近年、心血管合併症への関与が指摘されたことで、一部の製剤が市場から撤退し、使用状況に変化が生じている。

 そこでSingh氏らは、COX-2阻害薬の使用状況の変化がリウマチ患者の消化管障害の発症に及ぼす影響を検討するため、1997年〜2005年にかけて、米カリフォルニア州で30日間以上のNSAIDs連続投与を受けた65歳以上の関節炎患者を対象にした大規模コホート研究を実施した。同コホートではこの間、30日間以上のNSAIDs連続処方が合計447万4074件行われていた。

 NSAIDsの消化管障害に対する予防策としては、以前からプロトンポンプ阻害薬(PPI)プロスタグランジン製剤の併用が行われている。しかし実際にこれらの薬剤を併用されている患者は少なく、COX-2阻害薬が導入される以前は、多くの患者が何の消化管保護対策も講じられないままNSAIDsの処方を受けていた。

 今回のSingh氏らの検討によると、NSAIDsに代わってCOX-2阻害薬を服用する患者が増えたことで、2004年時点では消化管保護策を講じずにNSAIDsを処方された患者はわずか13.9%と、1997年時の79.1%から大幅な減少をみせた。

 深刻な消化管障害(入院や救急来院を要するか、死に至るような胃潰瘍および十二指腸潰瘍)の発症頻度も、1979年にはNSAIDs処方10万件当たり682.3件を数えていたが、2004年には357.2件へとほぼ半減していた。

 ところが、この時期に相次いだCOX-2阻害薬の市場撤退により、翌2005年には一転して使用率が激減し、消化管保護策を講じないNSAISs処方の割合は、前年の2倍超である34.8%に跳ね上がった。同時に、2005年における深刻な消化器障害の発生頻度も、434.21件/10万件と、前年に比べ有意な増加を示していた(p<0.0001)。

 Singh氏はこのような結果を踏まえ、COX-2阻害薬の使用減少を補うための、PPIやプロスタグランジン阻害薬の処方増加はみられるものの、十分な消化器保護対策としてはまだ不十分であると指摘し、「このまま適切な消化管保護対策が講じられずに高齢者でのNSAIDs使用が増え続けば、深刻な消化管潰瘍も増加し続けることになる」と警告した。