炎症の抑制に働く抗腫瘍壊死因子(TNF)α薬は心血管疾患(CVD)の抑制においても有用であることは理論的に推測されるが、その証明につながる前向き研究はそれほどなされていない。米国の大規模レジストリー「CORRONA研究」は、数少ないそうした研究になるものと期待されている。同試験の推進者の一人である米国ニューヨーク大病院のJeffrey Greenberg氏らにより、その成果の一端が紹介された。

 CORRONA研究は1999年に開始され、現在までに1万例以上の関節リウマチRA)患者のデータが集積されている。今回は、その登録者のうち、2006年2月までに登録されたRA患者9589例のCVDイベント発生状況の解析がなされた。エンドポイントは(1)心筋梗塞(MI)+脳卒中うっ血性心不全(CHF)の複合エンドポイント(3-CV)、(2)MI+脳卒中の複合エンドポイント(2-CV)という2通りの設定がされた。

 9589例のうち、抗TNFα薬の投与を受けていた患者は4651例(48.5%)であった。これらの患者における3-CVの発生は4年間で42件(MI 10件、脳卒中18件、CHF 14件)、発生率は100人・年当たり0.76件であった。一方、抗TNFα薬の投与を受けていない患者(n=4938)における3-CVの発生は66件(MI 16件、脳卒中24件、CHF 26件)、発生率は100人・年当たり1.24件であり、抗TNFα薬投与群において有意に低率であった(P=0.012)。

 抗TNFα薬非投与群に対する抗TNFα薬投与群の3-CVの相対リスクは0.61(95%CI:0.41-0.92、P<0.05)となり、抗TNFα薬投与群の優位性が示唆されたが、他のCVDリスク(年齢、性、糖尿病、高血圧およびCVDの既往)で補正した場合、相対リスクは0.75(95%CI:0.50-1.13)となり、統計的な有意差は認められなかった。

 しかしながら、治療期間の長さに応じて患者を4群に分類すると、補正の有無にかかわらず、相対リスクは治療期間が長い患者群ほど低くなり、非投与患者に対する12カ月超の患者群の相対リスクは0.51(補正時;95%CI:0.27-0.99、P<0.05)と有意に低下していた。治療期間1年あたりの相対リスクは0.62(95%CI:0.43-0.90、P<0.05)と算出された。

 これらの傾向は、2-CVのエンドポイントを採用した場合も同様であった。すなわち、抗TNFα薬が悪影響を及ぼす可能性が指摘されているCHFをエンドポイントに含めた場合も除外した場合も結果は変わりなく、CHFもまた抗TNFα薬による抑制の恩恵を受けていることが示唆された。

 以上より、インフリキシマブによる治療は、治療期間の長さに依存してCVDリスクを低下させることが強く示唆された。Greenberg氏らは、「その機序は炎症の抑制と関与していると考えられるが、他の可能性もあり得るだろう」と述べた。