抗腫瘍壊死因子(TNF)α療法は、関節リウマチRA)の症状や関節破壊を抑制するのみならず、RA患者の主要な死亡原因たる心血管疾患(CVD)死亡の減少をももたらすことが近年報告され、注目を集めている。英国Guy’s & St Thomas’NHS Foundation TrustのMelinda Wong氏らは、血管機能に対するインフリキシマブの効果を検討したDIVERT試験のpost-hoc解析の結果、インフリキシマブは、既知のCVD危険因子の改善とは独立した機序により、血管の柔軟性を改善することを報告した。

 DIVERT試験では、26例のRA患者をインフリキシマブ群(n=17)とプラセボ群(14週までプラセボを投与し、以後はインフリキシマブを投与;n=9)に割り付け、両群の血管機能改善効果の比較がなされた。56週間の追跡の結果、前者において有意な脈波伝播速度(PWV:血管の柔軟性の指標)の改善が認められ、また、統計的有意には至らなかったものの、血流依存性血管拡張(FMD:血管内皮機能の指標)の改善傾向も認められている。今回Wong氏らは、同試験においてインフリキシマブ群に割り付けられた17例の患者について、プラセボ対照期間とその後のオープンラベル期間を通算した56週の治療前後のPWVおよびFMDの変化を検討した。

 その結果、56週間のインフリキシマブ治療後のPWVは、治療前に比して有意に低下しており(p=0.03)、柔軟性が改善されたことがうかがわれた。多変量回帰分析の結果、PWVの低下は、インフリキシマブ治療期間および脈拍と有意に相関していることが示された(それぞれP=0.023、P=0.001)。しかし、インスリン抵抗性指数(HOMA-R)や血清脂質値など、既知のCVD危険因子は、PWVに影響を及ぼさなかった。

 一方、治療後のFMDは、治療前よりも増加(=改善)していたが、統計的有意差は見いだされなかった。しかし、多変量回帰分析の結果、FMDの増加とインフリキシマブ治療期間の間には有意な相関が認められ(P=0.020)、治療の継続によりFMDの改善がもたらされる可能性が示唆された。また、既知のCVD危険因子は、FMDの増加にも影響を及ぼさなかった。

 以上より、インフリキシマブによる治療は、既知のCVD危険因子の改善とは独立した機序により、RA患者の血管柔軟性を有意に改善するとともに、内皮機能の改善にも有用である可能性が示された。Wong氏は、「インフリキシマブがRA患者のCVD死亡率を低下させるという知見に対して、その作用機序の一端を、今回の検討結果によって説明できるかもしれない」と述べた。