心不全患者への抗腫瘍壊死因子(TNF)α薬投与は心機能に悪影響を与え、これに対する防御応答として誘導されたTNFαの上昇に伴い抗TNFα薬の効果が減弱されるなどの可能性が指摘されている。その一方で、抗TNFα療法は関節リウマチ(RA)患者の心不全発症リスクを低下させるとの報告もある。オーストリアHietzingコミュニティ病院のGerhard Witzmann氏らは、初回から3回目まで、6週間のインフリキシマブ反復投与に伴うリウマチ性疾患患者の心機能変化を心エコーにて評価した結果、臨床上の問題となるような影響は認められなかったことを報告した。

 対象は、心血管疾患およびその危険因子のないリウマチ性疾患患者26例である。これらの患者に対してWitzmann氏らは、インフリキシマブ(3〜5mg/kg)を0、2、6週の3回にわたって投与し、投与各回の前後に心エコーによる心機能パラメータ(左房径、左室収縮末期および拡張末期径、左室内径短縮率:FS、左室駆出率:EF、E/A比、肺動脈収縮期圧)と心筋・弁の運動および血圧、心拍数の変化を観察、記録した。

 6週間の試験期間中に、2例の患者が治療とは無関係の理由で脱落、1例が副作用のために試験を中止し、残る23例が試験を完了した。

 インフリキシマブ初回投与後、EFおよびFSの有意な増加が認められた(EF:64.7±4.3→67.3±5.4、FS:35.9±3.2→37.8±4.3;いずれもP=0.02)が一過性であり、 2回目の投与時(2週時)も変化が見られたものの有意差はなく、3回目の投与時(6週時)にはまったく変化は認められなかった。

 一方、心拍数においては、初回、2回目、3回目のいずれの投与後にも有意な増加が認められた(初回:69.4±8.8→74.9±9.9;P<0.001、2回目:71.3±11.5→75.2±9.3;P=0.03、3回目:69.4±9.5→74.4±9.0;P=0.01)。

 心拍数とFSは、ベースライン時と3回目の投与後の比較においても有意な増加が認められたが(心拍数:69.4±8.8→74.4±9.0;P≦0.01、FS:35.9±3.2→39.1±9.0;P=0.05)、EFについては有意な増加は認められなかった。また、その他のパラメータには、各回の投与前後およびベースライン時と3回目投与後のいずれにおいても有意な変化は認められなかった。

 以上の変化のうち、心拍数の増加については薬剤による影響ではなく、インフリキシマブ点滴投与時の点滴液による体液量の増加に伴う、単純な反射反応であろうとWitzmann氏らは解釈している。よって、6週間、3回のインフリキシマブ反復投与は、心筋および弁機能に対して問題となるような変化をもたらさないものと考えられる。しかし、インフリキシマブ初回投与時にEFおよびFSに増加が認められたという事実は、TNFα阻害が心筋収縮性に対して何らかの作用を有することを示唆しているという。より長期的な影響の有無については、継続的な検討が必要であろう。