関節リウマチRA)患者の中には抗リウマチ薬(DMARDs)への抵抗性を呈する患者が少なくなく、治療を進める上での大きな障壁となる。産業医大の鈴木克典氏らは、細胞内に侵入した異物の排出を司るP糖蛋白質(P-gp)がその鍵を担うものと推測し、その発現量などの検討を進めてきた。12日のポスターセッションにて同氏は、インフリキシマブによる治療がP-gp過剰発現の是正をもたらすことを報告し、薬剤耐性の改善という抗腫瘍壊死因子(TNF)α薬の新たな可能性を示した。

 P-gpは、多剤抵抗性-1遺伝子(MDR-1)の産物の一つであり、本来は細胞内から異物を排出するポンプとして働く。鈴木氏らは、DMARDsの標的であるリンパ球におけるP-gpの過剰発現が薬剤耐性機序の一端であるものと推測。その仮説を証明すべく、RA患者ならびに健康ボランティアの末梢血からCD4陽性リンパ球(T細胞系)とCD19陽性リンパ球(B細胞系)を採取し、P-gp発現をフローサイトメトリーにて測定、比較した。

 その結果、疾患活動性を有するRA患者(n=90)のリンパ球では、健康ボランティア(n=20)に比し、P-gp発現の有意な亢進が認められた(CD4陽性細胞、CD19陽性細胞ともP<0.01)。さらに、P-gpの発現量とRAの疾患活動性(DAS28)との間には、有意な正の相関が認められた(CD4陽性細胞:P<0.0001、r=0.194、CD19陽性細胞:P<0.0001、r=0.224)。

 次に同氏らは、実際にP-gpの亢進により、細胞外への薬剤の「くみ出し」がもたらされることを確認するために、上記の患者から採取したリンパ球に3Hにて標識したデキサメタゾンを添加し、細胞内のデキサメタゾン濃度の測定を行った。その結果、細胞内デキサメタゾン濃度は疾患活動性が高くなるほど低下し、両者の間には有意な負の相関が認められた(CD4陽性細胞:P=0.0193、r=−0.109、CD19陽性細胞:P=0.0006、r=−0.222)。

 ところで、P-gpをコードするMDR-1遺伝子の発現は転写因子YB-1による調節下にあり、このYB-1はTNFα刺激を受けると、細胞表面から核内に移動することが報告されている。従って、TNFαの作用を阻害することにより、YB-1の核内への移行を阻止し、P-gp発現の抑制を得ることが期待できる。

 そこで鈴木氏らは、抗TNFα薬であるインフリキシマブをRA患者に単回投与し、投与前と投与後2週間の末梢リンパ球におけるP-gp発現の変化を検討したところ、P-gp発現の亢進は著明に抑制された。さらに、細胞内のデキサメタゾン濃度もインフリキシマブの投与によって有意に増加した(P<0.01)。

 以上より、RA患者の薬剤耐性機序にはP-gpの過剰発現が大きく寄与していること、インフリキシマブによるTNFαの抑制はその是正をもたらし、薬剤耐性の改善に働く可能性があることが示唆された。本報告は、抗TNFα薬の新しい可能性を示した初めての報告である。さらに鈴木氏は、「P-gp発現を測定することは、インフリキシマブ投与でベネフィットを受ける患者を知るためのよい指標となるかもしれない」と、その応用の可能性についても言及した。